役職定年がなくなる時代へ − "実力の終身雇用"を生きる40代管理職の準備術 −
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「役職定年、最近なくなってきてるらしいよ」
そう聞いたとき、あなたは少しホッとしたでしょうか。それとも、なぜか胸の奥がざわっとしたでしょうか。
僕は、後者でした。
「定年まで肩書きが続くなら、安泰じゃないか」。でも、そうは思えませんでした。むしろ、ある事実に気づいてしまったからです。
役職で降りる仕組みがなくなるということは、「いつか自動的に肩の荷が降りる日」も、もう来ないということだ。
これは、40代前半の現役管理職である僕が、自分の足元を見つめ直した記録です。役職定年がなくなる時代に、降り場(ゴール)が消えた世界で、僕たちは何に備えればいいのか。今から書いていきます。
ナギ
「いつか肩の荷は降りる」と思っていた|その前提が、静かに崩れていた
結論から言います。多くの40代は、無意識に「いつか会社が降り場を用意してくれる」と当てにしてきました。けれど今、その前提が静かに崩れています。
正直に言うと、僕も昔は少しそう思っていました。管理職になる前は、「課長になって、その先は役職定年あたりで、徐々に肩の荷を降ろしていくんだろうな」と、ぼんやり描いていたんです。
でも、世の中の動きは逆を向いています。役職定年という制度そのものを見直す企業が増えてきました。人事院の調査では、役職定年を導入している企業はかつてより減っています。厚生労働省がまとめたシニア活躍の好事例でも、多くの企業が役職定年の見直しや廃止に踏み込んでいます。背景にあるのは、人手不足と、65歳・70歳まで働き続ける時代への移行です。
「一律に年齢で降ろす」という仕組みが、もう時代に合わなくなってきている。これ自体は、悪い話ではありません。けれど、降りる側から見ると、景色が変わります。
降ろしてくれる人なんて、もういないんだな。
これが、僕がたどり着いた実感です。
昔は、会社が人生をある程度設計してくれました。何歳で昇進し、何歳で役職を離れ、何歳で退職する。レールが敷かれていた。けれど、定年は延び、役職定年は曖昧になり、レールの終点が見えなくなっています。
僕はこれを、こう呼んでいます。
「実力の終身雇用」。肩書きが守ってくれる時代が終わり、一生、実力を問われ続ける世界です。
終身雇用は終わった、とよく言われます。でも実態は少し違う気がしています。雇用そのものは長くなった。終わったのは「肩書きが守ってくれる」という安心の方です。会社にい続けられるけれど、ずっと値踏みされ続ける。「いつか楽になる」ではなく、「いつまで価値を出せるか」が問われる時代になったのです。
役職定年がなくなることより、怖い本当のこと
ここが、この記事で一番伝えたいところです。先に結論を言います。
管理職として成長している実感は、確かにあります。でも同時に、最前線の技術や実務から、少しずつ離れている感覚もあります。これは成長である一方で、別の不安でもあります。
組織を回す力、人を育てる力、利害を調整する力。管理職になると、こうした能力は確実に伸びます。けれど、その裏で、自分の手を動かして何かを作る力は、少しずつ手放していく。これは、誰のせいでもない、自然なトレードオフです。
だから、時々こう考えるんです。
管理職を降りた未来の自分に、いったい何が残るんだろう?
役職がなくなったとき、肩書きがなくなったとき、自分は何で価値を出せるのか。
ここまで読んで、ドキッとした方がいるかもしれません。その感覚こそが、この記事の核心です。
役職定年がなくなることより怖いのは、役職がなくなった時に、自分に何が残るのか分からないことだ。
制度がどうなるかは、自分では決められません。でも、「何が残るか」は、今から自分で仕込めます。多くの40代管理職が、この不安をうっすら抱えながら、言葉にできずにいます。まず、ここを直視することから始めたい。
ただ、ひとつだけ先に言わせてください。
ただ、この不安は、悪いものではありません。むしろ「今ならまだ準備できる」という、サインでもあります。僕自身も、この不安があったからこそ、動き始めました。
僕の場合は、この不安を消そうとするのを、やめました。不安をなくすのではなく、不安に「備える」方へエネルギーを使う。そう切り替えてから、ようやく足が動き始めたんです。
ナギ
経済評論家・山崎元さんの「45歳」が教えてくれたこと
この不安と向き合うとき、僕の背中を押してくれた言葉があります。結論から言うと、「準備は、思っているより早く始めた方がいい」ということです。
経済評論家の故・山崎元さんが、生前のインタビューで、こう語っていました。
「45歳くらいをめどに、セカンドキャリアを考え始めましょう」
(ミモレ・2020年のインタビューより)
理由は、セカンドキャリアに必要な「能力」と「顧客(自分を求めてくれる相手)」は、どちらも手に入れるのに時間がかかるから。だから、早めに助走を始めておく必要がある、と。
山崎さんは、人生やお金の節目を整理して語った方でもありました。詳しくは触れませんが、45歳は「高齢期の働き方を見据えて準備を始める年齢」として位置づけられていました。
僕は、この「45歳」を、こう受け取りました。
「45歳で考える」のではなく、「45歳までに準備する」。
僕自身、40代前半です。だから、「まだ先の話」ではありません。むしろ、準備期間の真っ最中なんです。45歳は、ゴールではなく、スタートラインだと思っています。
そして、もうひとつ。これは、自分の親世代を間近で見てきて、強く感じることです。退職が近づいてから慌てて考え始めても、選べる道は、どうしても限られてしまう。だから、僕は同じ歩み方を避けたい。
何歳まで働くことになるのか、正直、誰にも分かりません。だからこそ、です。
定年の年齢になってから考えるのでは、遅い。その年齢になったとき、「まだ選べる自分」でいるために、今、準備するのだ。
山崎さんが、余命を意識しながら息子に向けて遺した一冊があります。働き方とお金、そして人生の幸せについて書かれた本で、40代がこれからを考える起点として、静かに効きます。
経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて
経済評論家・山崎元さんが、人生の最終盤に息子へ宛てて遺した手紙形式の一冊。働き方・お金・幸せの考え方が、肩肘張らない言葉で綴られています。「いつまで価値を出せるか」を考え始めた40代に、準備の起点を与えてくれます。
- 人的資本(あなた自身の稼ぐ力)という考え方
- 会社に依存しすぎないお金との付き合い方
- 40代以降の働き方を見直す軸が得られる
僕が40代前半の今、進めている準備|「攻め」と「守り」で考える
ここからは、具体的な話をします。結論を先に言います。全部やらなくていい。完璧でなくていい。まず一つでいいので、会社の外に「呼吸口」を作っておく。それだけで、未来はかなり変わります。
人間に酸素が必要なように、キャリアにも呼吸口が必要だ、と僕は思っています。会社という一つの場所だけに頼っていると、その場所の空気が薄くなったとき、一気に苦しくなる。だから、外に、酸素を取り込める場所を持っておく。
言い換えると、こうです。「実力の終身雇用」を生きるとは、会社の外に呼吸口を持つことだ、と。
僕が実際に進めている準備は、大きく分けて「攻め=スキルを伸ばす準備」と「守り=選択肢を守る準備」の2つです。先に全体像を出しておきます。
📒 これから話す「5つの呼吸口」
- 【攻め】スキルを伸ばす準備:① AI / ② 発信 / ③ 社外の人との接点
- 【守り】選択肢を守る準備:④ 投資 / ⑤ 健康
攻め|スキルを伸ばす準備
ここは、自分の市場価値そのものを育てる部分です。本丸と言ってもいい。
① AI
これが一番大きい。流行っているから触っているのではありません。AIは、これから仕事のやり方そのものを変えると思っているからです。しかも、自分が使えるだけでは足りません。チームや会社に、どう活かすかまで考える。ここまでやって初めて、管理職の武器になります。AIを「自分の再起動装置」として使う話は、別の記事でも書いています。
② 発信
このブログ「ナギシフト」も、その一つです。発信というと外向きの活動に見えますが、僕にとっては「前線復帰装置」なんです。管理職になると、自分の手で文章を書く機会が、驚くほど減ります。でも、書くことは、考えることです。考え続けるために、書いている。錆びつかないための装置、と言ってもいい。
③ 社外の人との接点
経営者や、他業界の人と話す機会を、意識して増やしています。会社の中だけにいると、どうしても視野が狭くなる。外に出ると、「そんな考え方もあるのか」が、大量に手に入ります。
この攻めの準備には、もうひとつ効用があります。自分の力が、会社の外でどう評価されるかが見えてくる。いわば、自分の市場価値を測る「高度計」を持てるようになる。これは、後で触れる転職という選択肢とも、自然につながっていきます。
ミライ
守り|選択肢を守る準備
攻めだけでは、息が続きません。土台として、守りの準備も進めています。
④ 投資
先に断っておくと、これは投資のアドバイスではなく、あくまで一個人の準備の話です。具体的な銘柄の話もしません。それでも、お金について考えることには、はっきりした意味があります。お金の自由度は、選択肢の自由度だからです。転職するかしないか。新しい挑戦をするかしないか。最後は、選択肢をどれだけ持てるかで決まります。まだ何もしていない人は、「自由度を増やすための準備」として位置づけだけでも持っておくと、後が楽になります。
⑤ 健康
地味ですが、ここが一番の土台かもしれません。どれだけ知識や経験があっても、体が動かなければ意味がない。僕は40歳を過ぎてから、人間ドックを受けるようにしました。管理職になると、想像以上に座っている時間が増えます。事務作業も多く、腰への負担も大きい。だから、毎晩のストレッチも欠かしません。若い頃は、多少無理をしても回復しました。でも、今は違う。50代、60代になっても動ける状態を保つこと。これも、立派なキャリアの準備だと思っています。
📒 自分の現在地を、一度測ってみる
- あなたが今、会社の「外」に持っている呼吸口はいくつありますか?
- 「肩書き」を外したとき、残るスキル・つながり・健康はどのくらいありますか?
- まず一つ、今月から始められる準備はどれですか?(攻め1つ/守り1つでもOK)
自分の今の立ち位置を知りたい方は、ナギシフトのセルフチェック・診断ツール一覧も使ってみてください。頭の中だけで悩むより、一度「見える化」する方が、最初の一歩を踏み出しやすくなります。
「会社に依存するな」ではない|呼吸口を一つ持つということ
ここで、前半の問いに戻ります。「役職がなくなったとき、自分に何が残るのか」。その答えが、これです。
誤解されたくないので、はっきり言います。僕が伝えたいのは「会社に依存するな」ではありません。それは、極端すぎる。
伝えたいのは、こうです。
会社以外にも、呼吸できる場所を、持っておこう。
会社が悪いわけではありません。今の仕事に全力を尽くすことは、とても大事です。ただ、会社「だけ」になると、苦しくなる。それだけのことです。会社だけが人生になると苦しくなる、という感覚は、以前40代管理職の本音を綴った記事でも書きました。
社外の人。学び。発信。副業。投資。何でもいい。一つでいいので、会社の外に、呼吸口を作っておく。それだけで、未来はかなり変わると、本気で思っています。
昔は、会社が人生を設計してくれた。今は、自分で設計する時代になった。
だから、不安になる必要はありません。その代わり、自分で準備する。たったそれだけのことです。
以前、「最後は自分で決めるしかない」という40代管理職の孤独について書いたことがあります。今回の話は、その続きだと思っています。孤独だから終わり、ではない。誰も降ろしてくれないなら、自分で、未来を作ればいい。
ナギ
まとめ|降り場を待つのではなく、自分で滑走路を作る
ここまでの話を、整理します。
✅ 役職定年がなくなる時代の準備まとめ
- 前提が崩れた=降ろしてくれる人は、もういない
- 怖いのは制度ではなく、「役職がなくなった時、何が残るか分からない」こと
- 管理能力は伸びるが実務は下がる=トレードオフを直視する
- 「45歳で考える」でなく「45歳までに準備する」=40代前半は準備期間の真っ最中
- 準備=会社の外に呼吸口を一つ(攻め:AI・発信・社外/守り:投資・健康)
役職定年がなくなることは、ニュースとしては「制度の話」です。でも、僕たち一人ひとりにとっては、「降り場が消えた」という、もっと切実な話です。
それでも、悲観する必要はないと思っています。降り場がないなら、降りる場所を探すのをやめればいい。代わりに、自分で飛び立てる場所を、今から作っておけばいい。
最後に、この記事の答えにあたる一文を残します。
降り場を待つのではなく、自分で滑走路を作っておく。
— Calmly. Surely. —
関連記事|40代管理職のキャリア戦略
”今の自分”を、外から測ってみる|管理職自身のための選択肢
最後に、この記事を読んでいる管理職自身の話を、少しだけ。
「自分には何が残るのか」という問いは、頭の中だけで考えても答えが出ません。いちばん早いのは、外の物差しを当ててみることです。転職する・しないは、別の話。大事なのは、“肩書きを外したとき、自分が市場でどう見えるか”を、一度知っておくことです。
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