全員で共有していたはずなのに、やり方はばらばらでした。 − "持ち寄りの議題"だけを場に出す −
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チーム全員が集まる会議がありました。一人ずつ、順番に、担当している仕事を報告してもらう形です。
進捗は分かります。困っていることも、一応は聞けます。会議のあとには「全員の状況を把握できた」という安心感が、僕の側にありました。
ただ、途中から気づいたことがあります。
話している部下は、ほとんど僕を見ています。今週はここまで進みました。次はこれを行います。ここで少し困っています。どの報告も、僕に向かって行われていました。
全員が話していました。でも、全員が僕に向かって話していました。
これは、会議のやり方の話に見えて、たぶん少し違います。同じ組織にいるのに、仕事の進め方が人ごとにばらばらになっていく理由の話です。そして、会議に出す議題を選び直した話です。
全員が話していたのに、仕事のやり方は変わらなかった
全員を集めても、仕事のやり方は共有されませんでした。一人ずつ僕へ報告する形では、部下同士の話がつながらなかったからです。
報告が終わると、次の人へ移ります。他の部下は、自分の順番が来るまで資料を見たり、メモを取ったりしています。発言は途切れません。むしろ、会議は賑やかでした。
それでも、部下同士の間には、ほとんど何も起きていませんでした。
僕は本当は、全員にチーム全体の状況を知ってほしいと思っていました。同じ組織で働いている以上、隣の人がどんな仕事をしているのか、どこで困っているのかも聞いてほしかった。
ただ、実際には、自分に直接関係する話には耳が向いても、個別の案件になると、関心は薄くなります。自分の順番が終わると、資料へ目が落ちる。聞いてはいるけれど、自分の仕事とは結びつけていない。
これを「全員の会議なのだから、すべての報告をきちんと聞くべきだ」と部下へ求めるのも、違うと思いました。関係の薄い案件を細部まで聞くのは、負担でしかありません。直すべきだったのは、部下の聞き方ではありません。全員で扱う中身を選んでいなかった、僕の方でした。
あとから考えると、あれはチームの会議というより、僕が普段行っている一対一の確認を、全員の前で順番に繰り返していただけでした。一対一の関係だけでは部下同士の間が整わなかった話は、以前書きました。この日の会議は、その一対一を人数分、公開で並べた形になっていたのだと思います。
課長に伝わっても、隣の人には届いていなかった
僕が何でも受け取ると、情報は届いたのに、選べる人が減ります。
そう気づいたきっかけがあります。部下同士がある話題を確認している時に、「その件は、課長には伝えてあります」という趣旨の言葉が出たことです。
言った本人に、悪意はありません。必要な相手へ報告した。管理職へ上げた。自分の役割は果たした。そう考えていたのだと思います。実際、僕も報告を受けた時点で「分かりました。こちらで見ておきます」と受け取っていました。
ところが、別の部下は、その話を知りませんでした。その人の仕事にも関係がある。知っていれば、別の選択肢を出せたかもしれない。それでも、話は僕と報告した本人の間で止まっていました。
返す言葉に、少し迷いました。部下が共有を怠ったというより、僕が何でも受け取っていたからです。
僕に話せば終わる。僕が必要な人へ伝える。僕がつなぐ。その形を、僕自身が作っていました。
全員にすべてを聞かせることが目的ではありません。ただ、僕との間で完結してよい話と、関係するメンバーへ返すべき話を、僕は分けていませんでした。区別がなければ、全部が僕のところで止まります。そして、情報を止めている本人ほど、そのことには気づきにくいものです。
同じ仕事に、二つの進め方があった
同じ仕事に、二つの進め方がありました。その差を広げていたのは、よいやり方が個人の中に残っていたことでした。
同じ種類の仕事をしているのに、一方の進め方では短い時間で問題なく終わり、もう一方では、かなり遠回りになっていたことがあります。時間だけではありません。やり直しも増えていました。
最初は、経験の差だと思いました。ただ、よく話を聞くと、それだけではありませんでした。
スムーズに進む方には、共通する動きがありました。先に確認すべきところを知っている。必要な情報を早い段階で集めている。やり直しが少なくなる順番で進めている。迷った時の確認先を知っている。
もう一方の進め方には、そうした確認の順番や、判断先の情報が共有されていませんでした。
同じ組織にいるのに、仕事の進め方は個人の中へ閉じていました。
では、その間、僕は何をしていたか。一人目には「順調ですね」と返し、二人目には個別に助言していました。二人とも、僕には話していました。でも、よいやり方は、隣まで届いていませんでした。
なぜ同じ組織の中で、ここまでやり方がばらばらなのだろう。その時は、そう思っただけでした。今は、こう考えています。ばらばらだったのは、進め方を持ち寄り、比べる機会がなかったからです。
断っておくと、これは揉めている二人を突き合わせる話ではありません。仲の良し悪しと関係なく、進め方だけが違っていた場面です。どちらかを責める話でもありません。よいやり方をチームのものにする仕組みを、僕が持っていなかった。それだけの話です。
ナギ
会議に出すのは、“持ち寄りの議題”だけにする
会議に出すかどうかは、「この話は、一人の中で終わらせてよいか」の一問で決めています。
この話は、一人の中で終わらせてよいか
その日から、会議に出すものを一つに絞りました。複数人の材料がそろって初めて、チームの判断や進め方が変わる話です。一人の報告を順番に聞く時間は、そこから外しました。これをこの記事では、“持ち寄りの議題”と呼びます。
持ち寄ると言っても、立派な提案を一人一つ用意してくる、という意味ではありません。自分の担当から見えている事実。うまくいった進め方。遠回りした場所。判断するために足りない情報。一人の中にはそろっていない材料のことです。
仕分けは、あの一問で足ります。
本人と僕の間で完結する報告や確認なら、一人の中で終わらせてよい話です。一対一や、文章で終えます。
一方で、他の人にも同じ問題が起きそうな話があります。
進め方や、やり直しの量に差が出ている。誰かの工夫が、他の仕事にも使えそうになっている。
こうした話は、本人へ個別に助言すれば、その場では片づきます。それでも、一人の中で終わらせず、会議で扱う価値があります。
進捗の報告を、なくしたわけではありません。先に読める形へ移しました。
会議で扱うのは、読んでも分からなかったことと、その場で決めることです。議題には、何を持ち寄ってほしいかも書き添えます。「新しい進め方について」ではなく、「各担当から、困る点と変えられる点を一つずつ」のように書きます。
僕が決めることと、メンバーへ返すこと
会議の中身と一緒に、もう一つ分けたものがあります。僕が決めることと、メンバーへ返すことです。
優先順位や、上位者へ上げるかどうか、誰が担当するかは、管理職である僕が決めます。ただ、情報を集めること、案を考えること、実際に試すことまで、僕の持ち帰りにはしません。
担当が不在で判断が止まった時は、僕がいったん決めます。誰にどこまで任せるかという話は、前に書いた通りです。ただ、全員がそろっている場で出た話まで、僕が持ち帰る必要はありませんでした。
だから、その場でこう返します。
では、次に誰が何を確認しますか。 関係する二人で、一度案を整理してもらえますか。 僕が決める必要があるところまで来たら、もう一度持ってきてください。
そして、僕は最後に話します。僕が最後に話すのは、先に出てくる材料を狭めないためです。僕が最初に答えを置くと、その時間は、答えを探す時間から、僕の答えを確認する時間へ変わります。課長の最初の一言は、自分が思っているより重いようです。
先に聞きます。
うまく進んだ時、最初に何をしましたか。 遠回りした場所はどこでしたか。 他の人のやり方で、使えそうなものはありますか。
全員の材料が出たら、最後に僕がまとめます。誰が確認するか。誰が試すか。僕が何を決めるか。いつ結果を共有するか。会議に出すなら、誰かの仕事が少し変わるところまで決める。そこまでで、一つの議題です。
一対一は減らしていません。悩みや育成、評価に関わる話は、これからも一対一で扱います。変えたのは、会議に出す議題の方です。
個別に聞いた話を会議へ戻す場合も、誰の話かは出しません。「複数の仕事で、同じところが止まっている」という形へ置き換えます。
まとめ|会議のあとに、誰の仕事が変わったか
全員を集めて、全員に話してもらう。それだけなら、前の会議でもできていました。変えたのは集め方ではなく、出す議題の選び方です。一人の中に閉じていた工夫が、隣の担当まで届くこと。それが、全員で集まる時間の意味だと、今は思っています。
📒 持ち帰るのは、この3つ
- 会議に出すかどうかは「この話は、一人の中で終わらせてよいか」で選ぶ
- 出すなら、誰かの仕事が少し変わるところまで決める
- 僕が担うのは、判断と責任。考えて動くのは、みんなで
今も、すべての会議をうまく選べているわけではありません。報告会に戻ってしまう日もあります。それでも、会議のあとに誰の仕事が変わったかは、見るようになりました。
会議の価値は、何人が話したかより、会議のあとに誰の仕事が変わったかに表れます。
※この記事は、一人の管理職の一次体験です。登場するやり取りは、特定の個人が分からないように再構成しています。
— Calmly. Surely. —
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