管理職は、偉くなる仕事じゃなかった。 "引き受けの総量"が一段増えるということ

(更新: ) 著者: ナギ
#管理職 #管理職論 #40代管理職 #キャリア #マネジメント #リーダーシップ #課長 #働き方
この記事は約 12分 で読めます

※本記事にはプロモーション(アフィリエイトリンク)が含まれます。紹介する商品・サービスは、運営者が実際に利用または検討した上で価値があると判断したもののみを取り上げています。

管理職は、偉くなる仕事じゃなかった|引き受けの総量が一段増えるということ

昇進を、何度か断った夜のこと

課長の話をもらった時、すぐに「はい」とは言えませんでした。

何度か、断る方向で話した記憶があります。

一番嫌だったのは、人事の揉め事を自分で背負う側になることでした。係長の頃にも面倒な人間関係のトラブルはありましたが、最終的には課長にお願いできた。「ここから先は、自分ではなく課長に」という線引きが、まだできました。

もう一つは、生産性に直結しない仕事が増えること。持ち回りの業務。誰かが決めた、よく分からない課題探し。将来の会社のための、答えのない宿題。

正直、「罰ゲームみたいだな」と思っていました。

管理職はしんどい。割に合わない。なりたくない。

もし今あなたがそう感じているなら、その感覚は、おかしくありません。実際、パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」(2026年)では、「現在の会社で管理職になりたい」と答えた正社員は15.7%でした。調査を始めた2018年以降で、最も低い水準です。

この記事は、管理職のなり方の解説でも、これまで書いた記事のまとめでもありません。係長から課長になって、自分の中で何が一段増えたのか。その話です。

📒 先に結論(この記事の3行)

  • 管理職になって増えたのは、仕事量ではない。自分の名前で「引き受ける量」が一段増えた。
  • しんどさの正体は、見る範囲と時間軸が広がること。罰ゲームに見えて、眺めもある。
  • 重いなら、何を引き受けているのかを分解すればいい。増やすか断るかは、その後でいい。

管理職になりたくなかった私が、それでも席に座った理由

正直に書くと、きれいな理由だけではありません。

何度も声をかけられて、説得された。だんだん、断るのが面倒にもなった。組織の流れもあったし、「自分しかいないのかな」という思い込みもあったと思います。

お金の面も、ゼロではありません。家計の管理をしていたので、係長の給料でも生活に困ることはありませんでした。それでも、給料が上がることに目がくらんだ面は、正直あります。ここは格好つけても仕方ない。

ただ、完全に嫌だったわけでもありませんでした。

怖いけれど、見てみたい気持ちもあった。自分がその席に座ったら、チームがどう見えるのか。今まで見えていなかったものが、見えるのか。そこには、少し興味がありました。

きれいに言い切るなら、「嫌だったけど、見てみたかった」。それが本音です。

管理職になって良かったと、毎日思っているわけではありません。しんどい日は普通にあります。でも、座ったから見えた景色は、たしかにありました。

バラバラだった出来事が、一つの重さに見えた日

係長から課長になって、いちばん変わったこと。それは、最終責任の戻り先でした。

係長の時も、責任はあります。でも、最終的には課長に戻せる部分があった。迷えば相談できるし、最後の矢面は課長が持ってくれる。ところが課長になると、相談はできても、最後は自分に返ってきます。決めるのも、説明するのも、謝るのも、部下を守るのも、自分。

もう一つ大きいのが、人事権です。業務量と予算を見て、人を増やす、減らす、配置を変える。それを説明し、部下にも伝える。良い知らせも、悪い知らせも。係長までは、人事権はありませんでした。だから、ある意味では気楽だった。「課長が決めたことだから」と線引きできた。課長になると、その線引きが消えます。

この1年、僕はいくつか記事を書いてきました。管理職は罰ゲームなのか。課長席から何が見えるのか。部下のノーをどう受け取るのか。自分の指示が、なぜ伝わらないのか。

一見、バラバラの話です。でも、ある時、ふと気づきました。全部、つながっている、と。

📒 この1年、僕が受けてきたもの

  • 部下のノーを、判断材料として受ける
  • 伝わらない指示を、自分の問題として出し直す
  • 罰ゲームだと思う、自分の本音も見る
  • それでも悪くない、という眺めも受ける

面子の問題にせず、相手のせいにせず、いったん自分の名前で受ける。並べてみて、気づきました。

ぜんぶ、引き受けの総量という一つの重さだった。

何か一つの事件で分かったわけではありません。記事を書きながら、だんだん見えてきました。「あれ、自分はずっと同じ話をしているな」と。

管理職は、偉くなる仕事ではありません。引き受ける量が、一段増える仕事です。

念のため、はっきり書いておきます。これは「自分でやった方が早い、を手放せない」という動きすぎの話ではありません。動く前に、そもそも自分が何を背負っているのか、という話です。

管理職がしんどい理由は、仕事量ではない

「管理職になったら、忙しくなった」。よく聞きます。間違ってはいません。会議も、調整も、判断も増えます。

でも、しんどさの本当の正体は、仕事量ではないと思っています。

見る範囲と、時間軸が広がること。これがいちばん大きい。

プレイヤーの頃は、自分の担当だけを見ていればよかった。課長になると、チーム全体を見る。さらに、他部署との連携や、会社全体とのつながりまで意識する。直接は見ていない範囲まで気を配るので、入ってくる情報量が、格段に増えます。

時間軸も伸びました。感覚的には、三倍くらいです。目の前の納期だけでなく、来年、再来年、その先のチームをどうするかを考える。今すぐの生産性に直結しない、会社の課題まで引き受ける。

見る範囲が横に広がり、時間軸が縦に伸びる。その面積が、引き受けの総量です。仕事の「数」が増えたというより、見ている「面積」が一段広がった。だから、重い。

引き受けの総量=見る範囲と時間軸が一段広がる|管理職がしんどい理由
しんどさの正体は、仕事量ではない。見る範囲と、時間軸が広がることだ。

ただ、これは見方を変えると、視点が広がるほど、打てる手も増える、ということでもあります。

それでも、座ったから見える眺めがある

総量は増えました。でも、増えた分だけ、見える眺めも広がりました。これは、座ってみないと分からないことでした。

経営側の目線が、少し増えた実感があります。会社全体の方針や、組織としての優先順位を考えるようになった。もっとも、それと同時に、見えなくてよかったしがらみまで見えてくる。これは、ただの愚痴かもしれません。でも、それも含めて、座ったから見えた眺めです。

チーム全体が、少しずつ動いていく。部下が成長して、前はできなかったことを任せられるようになる。自分が直接手を動かしていないのに、チームとして成果が出る。これは、プレイヤーの頃とは違う景色でした。

その上で、はっきり言いたいことがあります。

管理職を断るのも、正しい選択です。逃げではありません。

大事なのは、自分が何を大切にしているかを整理することだと思います。もっと稼ぎたい、権限があれば前向きな取り組みができる、自分で手を動かすよりマネジメントの方が向いている。そう思うなら、座ればいい。専門性を深めたい、技術で価値を出したい、生活のバランスを崩したくない。そう思うなら、断ればいい。

どちらも正しい。ただ、一つだけ。

断っていい。でも、何を断っているのかは、言葉にしておいた方がいい。

何が嫌なのか。責任なのか、評価なのか、人間関係なのか、自分の時間がなくなることなのか。そこを見ないまま断ると、あとでモヤモヤが残ります。何を引き受けたくないのかが見えていれば、その判断は、いつでも胸を張れます。

管理職は割に合わない。それでも、重さを分解する方法

しんどい、割に合わない。その感覚は、おかしくありません。責任は増える。調整も増える。自分でやった方が早いのに、我慢する。部下からはノーが返り、自分の指示は伝わらず、上からは成果を求められる。それで「しんどい」と思わない方が、不自然です。

ただ、そのしんどさを、全部まともに抱えすぎると、自分も部下もつらくなります。最近思うのは、ある程度は気楽に受け流すくらいが、ちょうどいいということです。もちろん、集中すべき案件には全力で向き合う。適当に振る舞いすぎると信頼を失う。そこは上手に乗りこなすスキルが要ります。でも、すべてを同じ重さで抱える必要はありません。

引き受けの総量が増えているのだから、重く感じるのは当然です。あなたが弱いからではない。

だから、こうしてほしいんです。

重いなら、何を引き受けているのかを、分解すればいい。

分解する、ただそれだけで、少し軽くなります。受信(部下のノー)が重いのか。発信(指示)が重いのか。手放せていないのか。人事や評価が重いのか。会社の課題なのか。それとも、まだ眺めを見つけられていないのか。

どこが重いかが分かれば、打ち手が見えます。そして、その一つひとつには、すでに記事があります。下に、自分のしんどさがどこにあるかを見るための地図と、点検リストを置いておきます。


引き受けの内訳マップ|あなたのしんどさは、どこにあるか

引き受けの総量は、大きく4つに分けられます。今いちばん重いのが、どこかを見てください。

引き受けの内訳マップ|なぜ引き受けるか・受信・発信・手放す の4象限
重いと感じたら、それが今いちばん引き受けている場所だ。

管理職セルフ点検リスト|重い3つだけ、選べばいい

点数を競うものではありません。当てはまらない項目があってもいい。重いと感じる3つだけ選んで、そこから手をつければ十分です。

管理職セルフ点検リスト|重い3つだけ選べばいい
点検は、点数じゃない。いちばん重い引き受けを、見つけるためのものだ。

📋 引き受けの総量・セルフ点検(12項目)

  • 自分の名前で、最終判断する場面が増えた
  • 人事や評価の話を、自分の名前で説明する場面が増えた
  • 部下のノーを、反抗ではなく判断材料として聞けている
  • 「いい感じに」で済ませず、目的・ゴール・NGラインを渡している
  • 自分でやった方が早い仕事を、あえて任せられている
  • 上の方針と現場の本音を、翻訳してつなげている
  • 目の前だけでなく、1年後・3年後のチームを考える時間が増えた
  • 会社や組織全体の課題を、自分ごととして考える場面が増えた
  • 管理職は罰ゲームだ、という自分の本音を、否定せずに見られている
  • それでも、この席だから見える眺めが、一つでもある
  • 社内の評価だけでなく、社外の物差しでも現在地を見ている
  • この先、引き受け量を増やすか・維持か・減らすかを、言葉にできる

※最初の2項目(最終判断・人事を自分の名前で)に当てはまらないなら、それは「まだ引き受けていない」ということ。それも一つの答えで、悪いことではありません。
重い項目が 0〜3個 なら、総量はまだ扱える範囲。4〜7個 なら、重い3つから分解を。8個以上 なら、抱えすぎのサイン。受け流す勇気と、社外の物差しを持つタイミングです。

重い項目が「任せられない」なら、手放し方の記事を。「人事や評価を伝えるのが苦しい」なら、承認の伝え方の記事を。そして「社外での自分の値段が分からない」なら、市場の物差しを一度見ておくのも手です。転職するためではなく、健康診断のように。

▼ 主要2社・公式サイト(登録無料/社外の物差しで"現在地"を測る"高度計"として。転職を決めなくてもOK)

JACリクルートメント ハイクラス・管理職に強い・面談で強みを言語化してくれる → リクルートエージェント 求人数トップクラス・市場の全体感がつかめる →

まとめ|重さの正体が見えれば、選べる

管理職は、偉くなる仕事ではありません。自分の名前で引き受ける量が、一段増える仕事です。

その量の正体が見えれば、座り続けるか、降りるか、別の形で関わるかも、少し考えやすくなります。

重いなら、何を引き受けているのかを、分解すればいい。

しんどいのは、あなたが弱いからではありません。引き受ける量が、増えているからです。だったら、全部を一度に背負わなくていい。重い3つから、ほどいていけばいい。


もう一歩、深く知りたい人へ

「自分は何を引き受けたいのか」を考えるなら、この一冊が効きます。管理職スキルの本ではなく、自分のキャリアそのものを引き受けるための本です。

苦しかったときの話をしようか 表紙
▶︎ 自分のキャリアを、引き受けるための一冊

苦しかったときの話をしようか

森岡 毅 著(ダイヤモンド社)

管理職になるかどうかも、結局は「自分が何を大切にして、どこで価値を出すか」に行き着きます。自分の強みと向き合い、何を引き受けたいのかを言葉にする。断る判断も、座る判断も、ここから始められます。

  • 強みは「好きなこと」の中にある
  • 何を引き受けたいかを、自分の言葉にする
  • 座るか断るか、その前に読みたい一冊
Amazonで見る →

あわせて読みたい:座って「経営側の目線」を持つとはどういうことか、その実感に触れたいなら、平井一夫『ソニー再生 変革を成し遂げた「異端のリーダーシップ」』も参考になります。


関連記事


※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。リンク経由で商品をご購入・ご登録いただくと、運営者に紹介料が支払われることがあります。価格や評価が変わるものではありません。また本記事は特定のサービスへの転職を勧めるものではなく、管理職になるかどうかの判断は人それぞれです。具体的な対応は、自社の状況やご自身の価値観に合わせてご判断ください。

🧭 次に読むおすすめ

この記事とテーマの近い順に選んでいます

同期に、抜かれた日|横の物差しを床に置けなかった40代課長の話
関係性マネジメント

同期に、抜かれた日|"横の物差し"を、床に置けなかった40代課長の話

プレーヤー時代には見えていた手本の背中が、管理職になった日から見えなくなった。手本のないまま一人目を務める40代課長の静かな心細さ
管理職論

プレーヤー時代には、手本がいた|管理職になって背中を見失った僕の"継ぎ足しの見本帳"

辞令は、相談じゃない|配属の重力に平時から備える40代管理職
管理職論

辞令は、相談じゃない。|"配属の重力"に、平時から備える40代管理職の話