不機嫌ではありません。ただ、無口でした。
※本記事にはプロモーション(アフィリエイトリンク)が含まれます。紹介する商品・サービスは、運営者が実際に利用または検討した上で価値があると判断したもののみを取り上げています。
その言葉を聞いたのは、夕方でした。
「今日は元気がなさそうでしたので、話しかけるのを控えていました」
部下が持ってきたのは、朝の時点で分かっていたはずの話でした。
僕は、不機嫌だったわけではありません。朝から締切の近い仕事に頭が入り込んでいて、口数が減っていただけです。怒ってもいないし、誰かに苛立っていたわけでもありません。
それでも部下は、僕の様子を見て、話を持ってくる時間を後ろへずらしていました。
管理職の状態は、黙っていても読まれています。そして、こちらが何も出さないほど、相手は推測で埋めるしかなくなります。直すべきものは、機嫌よりも手前にありました。推測させない工夫です。この記事は、その話です。
「元気がなさそうでした」と、部下は言った
僕は怒っていませんでした。でも、そう見えていました。
冒頭の日、部下が夕方に持ってきた話は、内容としては難しいものではありませんでした。ただ、朝に聞いていれば、その日の動きは変えられたはずの話でした。あとから「それなら、もっと早く持ってきてもらってよかったのに」と思ったことを覚えています。
部下に落ち度はありません。僕の口数が減り、目線が画面から動かない。その様子から「今は控えた方がよさそうだ」という判断材料を拾って、動く時間を決めていただけです。むしろ、よく見てくれていたと思います。
こうした日が続けば、結果として話が遅れて届いたケースは、ほかにもあったと思います。すべてがそうだったとは言いません。ただ、僕の側に原因の一端がある遅れは、確かにありました。
そして、気づけたのは、部下が理由を口にしてくれたからです。もしあの時、言ってくれなければ、僕はその日の遅れを、ただの偶然だと思っていたはずです。
僕は、集中していただけだった
無口の原因は、部下とはまったく関係がありませんでした。
上から来た案件で頭がいっぱいの日。締切が近い仕事を処理している日。新しい案件の初期構想を考えている日。自分の手を動かさなければならない仕事に入ると、僕は一度、かなり深くまで入り込みます。そうなると、周りが見えにくくなります。
昔は、今より強く「話しかけるな」という雰囲気が出ていたと思います。今は減ったと思っていますが、なくなってはいません。その日の僕を決めているのは、目の前の仕事の種類です。部下から見れば、日によって別人に見えていたかもしれません。
ここで一度、言葉を分けておきます。怒りには、相手がいます。集中には、相手がいません。僕の中では、この二つはまったく別のものです。でも、外から見えるのは口数と表情だけです。どちらも同じに見えます。
ナギ
僕の無口は、「今は話しかけるな」になっていた
僕には集中していただけでも、相手には「今は話しかけない方がいい」という情報として届いていました。
相手からは、僕の頭の中は見えません。
締切のことを考えているのか。誰かに腹を立てているのか。外からは、区別する材料がありません。僕には「集中」でも、相手にそう見えるとは限りません。
少なくとも僕の周りでは、僕の状態を見て、話しかけるかどうかや、そのタイミングを決めている人がいました。僕の状態が、その日の話しかけやすさを決める条件の一つになっていました。僕が何かを言ったからではありません。何も言わなかったことが、そのまま判断材料になっていました。
そして話しかけやすさは、話が届く速さにも影響します。朝に届くはずの話が、夕方になる。それだけで、その日に打てる手は減っていきます。
感情をぶつけることと指導の線引きの話は、前に書きました。今回はその逆側です。ぶつけてもいないのに、伝わっていた話です。
僕の側の事情は、僕の中にしかなかった
あの日、変える必要があったのは、集中そのものではありませんでした。相手からどう見えているかの方でした。
「怒っていないんだけどな」と心の中で思っていても、それは相手に届きません。僕の側の事情は、僕の中にしかない。相手が使えるのは、外に出ている材料だけです。
だから、集中で口数が減りそうな日は、先にこう伝えるようにしています。
「皆さんの相談の方が優先なので、いつも通り話しかけてください」
実際に使っている言葉です。うまい言い回しではありません。でも、これを先に出しておくと、「今日は話しかけていいのか」を相手が推測する必要がなくなります。判断の材料を、無口以外にもう一つ渡しておく。それだけのことです。
僕がやったことがきっかけで、次の話が来なくなることは、前に書きました。今回は、何もしていないのに遅れていた話です。だから対策も、行動を改めることではなく、状態を先に伝えることでした。
集中は、やめない。見えるようにする
集中すること自体は、仕事に必要です。やめたのは、集中を相手に読ませることだけです。
言葉で伝えるほかに、もう一つやっていることがあります。予定表(Outlookなど)に「集中タイム」という予定を入れて、チームから見えるようにしました。案件によって長さは変えます。ツールは何でも構いません。大事なのは、チームから見えていることです。
予定表に出ていれば、部下は「今なのか、あとでいいのか」を、僕の表情ではなく予定で判断できます。実際、優先度に応じて持ってくる時間を選ぶ材料にしてもらえているようです。「集中タイム」と書いていても、急ぎの相談は割って入っていい、と先に伝えています。
やってみて分かったこともあります。予定として書き出すと、僕自身にも区切りができます。終わりの時刻が来たら、手を止めて顔を上げる。入り込みやすい僕には、その区切りも役に立っています。
最後に、これだけは書いておきます。疲れる日はあります。余裕のない日もあります。管理職だから毎日明るくいるべきだ、とも思いません。
機嫌を良くする努力より先に、できることがありました。誤解される前に、今日の自分を先に知らせておくことです。
まとめ|機嫌より先に、渡せるものがあった
判断の材料が無口しかなければ、相手は推測で埋めるしかありません。材料を先に渡せば、推測はいらなくなります。部下が待っていたのは、話しかけていいと分かる材料でした。
🗒 無口な日の、置き手紙
- 何も伝えなければ、相手は見えている状態から判断する
- 機嫌を直すのではなく、状態を先に伝えておく
- 集中はやめない。予定表などで見えるようにする
今も、深く入り込む日はあります。その日の僕は、たぶん今も少し話しかけにくい。それでも、あの夕方のような遅れは減らせると思っています。
あの日の僕に必要だったのは、機嫌を直すことではありませんでした。「いつも通り話しかけていい」と、先に伝えることでした。
※この記事は、一人の管理職の一次体験です。状況や時期は、個人が分からない形に整えています。
— Calmly. Surely. —
もう一歩、深く知りたい人へ
※ここからはアフィリエイトリンクを含みます。
自分の小さな振る舞いが、周りにどう見えているのか。もう少し考えたくて読んだ本です。職場での「小さな振る舞い」が周囲の人の仕事にどう影響するかを、研究をもとに扱っています。自分では気づいていない小さな振る舞いまで扱っているところが、今回の話とつながりました。
Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である
職場の小さな振る舞いが周囲に与える影響を、長年の研究をもとにまとめた一冊です。本記事の「状態が情報として読まれていた」の先を、振る舞い全般に広げて考えられます。
- 精神論ではなく、研究にもとづいて「小さな振る舞い」の影響を扱っている
- 礼儀正しさを「弱さ」ではなく「戦略」として捉え直す視点
関連記事
🧭 次に読むおすすめ
この記事とテーマの近い順に選んでいます