二人で聞く話と、全員に出す話。 − 職場の"話の間取り" −
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二人で向かい合って聞く話と、全員の前に出す話。同じ話でも、この二つは別のものになります。
一対一の時間には、提案が出てきます。全体の場では言いにくいことも、二人でなら出てくる。その中に、聞いた僕が「これは広めたほうがいい」と思うものがあります。
僕はそういう提案を、二つ、続けて出したことがあります。結果は分かれました。分けていたのは、中身の良し悪しより、どこで、どの順で扱うかでした。
もし、まだどう扱うか決めていない話が一つ浮かぶなら、その一件を頭の片隅に置いたまま読んでみてください。
このブログは最初に「実装ログだけを書く」と約束したので、今回も、新しい失敗のほうから書きます。
同じ場所に出して、片方だけ通らなかった
二つの提案を分けたのは、出した場所と、出した順番でした。
二つとも、一対一の時間に出てきた提案でした。どちらも、仕事が良くなる話だと思いました。資料をつくって、課の会議に出しました。
片方は、その日のうちに決まりました。あとから思えば、あれは誰も困らない提案でした。
もう片方は、説明が終わったあと、少しの間、誰も何も言いませんでした。最初に出た言葉は、中身についてではありませんでした。
「それ、誰が引き受けるんですか」
僕はその場で説明を足しました。数字も足しました。空気は戻りませんでした。
止まったほうの何が足りないのか、しばらく分かりませんでした。説明が薄いのだと思って、次の機会に一枚足しました。それでも動きませんでした。出す場所を間違えていた、とは考えていませんでした。
あとから振り返ると、足りなかったのは説明の量だけではありませんでした。抜けていたのは、その一件をどこで、どの順で扱うかでした。
ナギ
一対一を増やしても、片づかない話がある
一対一には、そこでしかできないことと、そこではできないことがあります。
一対一の回数を増やした時期があります。増やせば片づくと思っていました。実際、その人のことは分かるようになりました。全体の場では言いにくい話も、二人の時間なら出てきます。
それでも、部下二人のあいだで起きた食い違いは、僕が一人ずつ二回聞いても整いませんでした。一人ずつ聞くこと自体は、今も正しかったと思っています。足りなかったのは、同じ条件で聞くことでした。
先に書いておくと、一対一の役割は変えていません。二人でしか出てこない話が、確かにあるからです。変えたのは、そこで出た話の運び方のほうでした。
職場の話には、間取りがあります。一対一で聞く話、二人のあいだで扱う話、全員に出す話、課の外と合わせる話。
僕は、その一件をどこで扱うかを毎回決めていました。ただ、それを一つの仕事として意識していませんでした。
四つは、誰の耳に入るかの区切りです。口で言うか、文章で回すかは別の軸なので、ここでは分けていません。
四つの間取りと、そこでしかできないこと
置く場所が決まると、やることが決まります。会議に出すかどうかを決める一問(この話は、一人の中で終わらせてよいか)は、今も使っています。変わったのは、「いいえ」のあとの行き先が三つあると分かったことだけです。
「この前入ってきた人のこと、まだよく分かっていない」
これは、一対一でしか始まらない話です。最初にやるのは、その人にとっての「普通」を知ること。測るのは、そのあとでいい。
全体の場で言えないことがあるのは、場が悪いからだけではありません。話の種類によって、届く場所が違うだけのこともあります。
その最初の30分で、僕が7割しゃべっていた話は、この回に書きました。
「片方から先に、聞いてしまった」
ここで言う二人に、僕は入っていません。部下二人のあいだの話です。
ここでやるのは、同じ条件で聞くこと。公平を決めるのは、両方から聞いたかどうかより、聞き方がそろっていたかどうかです。
二人目の話を、僕は答え合わせとして聞いていました。
「一人がうまくやっている方法を、他の人にも広げたい」
これは、全員の時間の話です。ここでやるのは、一人の中で終わらない材料を持ち寄ること。個別に言った助言は、隣まで届きません。
全員が話していたのに、仕事のやり方は変わらなかった話は、この回に書きました。
「何度頼んでも、他部署が動かない」
これは、課の外の話です。ここでやるのは、指示が効かない場所で、合意をつくること。
動かないのは相手のせいだと思っていました。先に見直すのは、こちらの進め方でした。
僕が連絡したら動いた。それが嬉しくなかった話は、この回に書きました。
もう一度、さっきの図を見てください。真ん中に、僕の机が描いてあります。
四つを並べてから気づいたのは、どれにも置かず、全部を自分の机で止めていた時期があることでした。
動かすなら、同意は何人ぶんか
間取りは選べます。ただ、どこからどこへ動かすかで、先にやることが変わります。
僕は、一対一で聞いた話を別の場へ動かすとき、まず話してくれた本人に確認します。二人に関わる話を全員の場へ出すなら、二人とも置き去りにしないようにしています。課の外へ持っていくときは、個別のやり取りをそのまま広げず、決まったことと必要な背景に整理します。
一度、広い場に出した話を、二人だけが知っていた状態には戻せません。でも、僕自身は、あとから本人のところへ戻れます。
あの止まった提案に、話を戻します。
あの提案には、楽になる人と、その分だけ手間が増える人がいました。僕が先に用意していたのは、楽になるほうの説明でした。手間が増える側の人と、二人で話す時間は取っていませんでした。全員のいる場でその話が出たとき、その人が最初に見たのは、自分の手間のほうでした。
あのとき僕が確認を飛ばしていたのは、その話で手間が増える側の人でした。
先に話すのは、賛成してもらうためではありません。その人の事情を、僕が知らないまま決めてしまわないためです。反対のままでも構いません。順番だけの話です。
いまは、動かす前の順番を先に確かめるようにしています。
もう一つ、あのとき見えていなかった選択肢があります。まだ動かさない、です。
仕事の優先順位や、上位者へ上げるかどうかは、これまで通り僕が決めます。決め方が変わるのは、人から預かった話のほうです。
※健康・安全・嫌がらせなど、本人の了解を待つことで対応が遅れる話は別です。この種の話は一人で持たず、社内のルールに沿って必要な相手へつなぎます。つないだあとも、様子を見る役目は残ります。
この会社の外で働く話を聞くとき、僕がどうしているかは、この前に書きました。
ナギ
動かす前に、三行だけ書く
迷ったら、その一件について三行だけ書きます。30秒で済みます。
✍ 動かす前に、三行だけ書く
- ① この話は、いまどこにありますか(本人の中/二人のあいだ/全員の時間/課の外)
- ② 次に、どこへ動かしますか(「動かさない」も選択肢)
- ③ 動かす前に、誰への確認がいりますか
結果は出ません。行き先が一つ決まるだけです。
僕なら「二人のあいだ/まだ動かさない/確認は不要」と書く日もあります。
数えなくてもいい、次の会議で一度だけ意識してみる、と100本目に書きました。それを、この三行でやるだけです。
三行書けたなら、あなたの一件の行き先は、もう決まりかけています。
まとめ|僕の手元には、まだ置いていない話がある
行き先が決まらない一件は、残していい。それも、この間取りの中にあります。
いま、僕の手元には、まだどこへも動かしていない話があります。軽い話ではありません。止めているのは、僕の判断です。
もちろん、さきほど書いた例外は別です。健康や安全に関わる話を、決まらないまま持っているわけではありません。決めかねているのは、急がなくていい種類の話です。
その人がそれを僕のところへ持ってきてくれたこと自体は、良いことだと思っています。話す場所として、ここを選んでもらえたということだからです。信頼というより、まだ様子を見てもらっている段階だと思っています。扱い方を間違えれば、次から話してもらえなくなることもあります。だから、止めている理由がいまも生きているかは、ときどき確かめることにしています。
いま僕の手元には、どの間取りにも運んでいない話が、一つあります。今日も、動かしていません。
※この記事は、一人の管理職の一次体験です。出来事は、特定の個人や部署、案件が分からないよう、複数の経験をもとに再構成しています。扱う場所の話をするための記事なので、提案そのものの中身は書いていません。
— Calmly. Surely. —
僕の四つと、重なる本があった
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僕が今回整理した四つを、別の角度から考えられる本がありました。職場の関係を研究の側から扱った本で、妬み、温度差、隠れた不満、権力との付き合い方と、この記事で通ってきた場面に重なる話が並んでいます。
武器としての組織心理学 人を動かすビジネスパーソン必須の心理学
リーダーと部下の関係を、組織心理学の研究をもとに扱った一冊です。この記事で書いた「どこで扱うか」の、その先を考えられます。
- 妬み・温度差・隠れた不満・権力との付き合い方を、研究にもとづいて扱っている
- 本書が主に扱うのは、場所の決め方より、そこで動く感情のほう
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動かしたあと、僕がどう本人のところへ戻ったかは、この回に書いています。
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