初回の1on1に、正解の質問はいらなかった。 「ゼロ点合わせ」という考え方

(更新: ) 著者: ナギ
#1on1 #新任部下 #管理職 #マネジメント #ゼロ点合わせ #部下との関係 #40代
この記事は約 11分 で読めます

※本記事にはプロモーション(アフィリエイトリンク)が含まれます。紹介する商品・サービスは、運営者が実際に利用または検討した上で価値があると判断したもののみを取り上げています。

面談室で新しく来た部下と机を挟んで向かい合う40代の管理職

新しく部下が来ることになった時、僕は「最初の1on1で何を話すか」を考えていました。

良い質問を、いくつか用意しておこう。話を、ちゃんと聞こう。そう思って面談室に入りました。

30分後。

会話は、一度も途切れませんでした。空気も悪くなかったと思います。

でも、部屋を出てから気づきました。話していたのは、ほとんど僕でした。

話を聞くつもりで始めた1on1で、僕が7割話していました。

もし「初回の1on1で何を話すか」を探してこのページを開いた人がいたら、少しだけ付き合ってください。僕も同じことを探していました。そして、質問より先にやることがあった、という話です。

ナギ
10月の異動や新しい配属を前に、「最初の面談、何を話そう」と少し構えている人に向けて書いています。僕自身、何度やっても初回は構えます。だからこそ、先に失敗談を置いておきます。

ナギ

📒 先に、この記事の予告を3行

  • 初回の1on1は、正解の質問を探すより先に「ゼロ点合わせ」
  • 合わせるのは相手ではなく、相手を見る自分の物差し
  • 初回の成果は、本音を聞けた量ではなく「次も話してよい」と思ってもらえたか

話を聞くつもりで、僕が7割話していた

あの30分で、何が起きていたのか。振り返ると、こうでした。

最初に、簡単な質問をします。これまでの仕事のこと。ここまでの印象。

相手は丁寧に答えてくれます。でも、初対面の上司相手です。答えは短く、そこで一度、間ができる。

その沈黙が、僕は苦手でした。場の空気が悪くなったように感じて、僕が話し始めるんです。

このチームの仕事のこと。自分の考え方。困った時の相談の仕方。これまでの経験。

相手に安心してもらうために話しているつもりでした。でも終わってみれば、僕の説明会になっていました。

話している最中は、会話が途切れないので、うまくいっているように感じます。けれど、少なくとも、相手の中に何が残ったのか、僕には分かりませんでした。

沈黙を埋めることと、安心して話せる空気を作ることは、同じではありませんでした。

面談の最後に、「困ったことがあったら、いつでも言ってください」と伝えました。でも、その後しばらく、その人から相談が来ることはありませんでした。話せる関係を作る前に、相談の入り口だけ置いていたのだと思います。

1on1を、僕は教わっていなかった

念のため書いておくと、これは「上司が反省すべきだ」という話ではありません。

考えてみれば、少なくとも僕は、1on1のやり方を、きちんと教わった記憶がありません。

会議の進め方は先輩の見よう見まねで覚えました。報告書の書き方は直されながら覚えました。でも、部下と一対一で30分話す時間の使い方は、教わらないまま、ある日「やることになった」。そういう人は、僕だけではない気がします。

調査を見ると、同じように感じている上司は、少なくないようです。パーソル総合研究所が2024年に行った「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」(従業員50名以上の企業で、直近半年に1on1を行った正社員3,000名。うち上司1,500名・部下1,500名/複数回答)では、上司1,500名が1on1で困っていることの第1位は「面談について学ぶ仕組みがない」で35.4%でした。

困りごとの1位は、進め方でも部下の反応でもなく、「学ぶ仕組みがない」ことでした。2位は「多忙で予定が組めない」で35.3%。ほとんど横並びです。上司の悩みは、「時間がない」と「習っていない」の二つに割れていました。

時間のなさは、想像がつきます。でも、もう半分が「習っていない」だったことには、妙に納得しました。

教わらないまま、良かれと思って何かを話している上司は、僕のほかにも少なくないのだと思います。僕が7割話していたのも、その一つの形でした。

沈黙を、上司の準備不足だけで片づけることはできません。準備した質問が悪かったとも限らない。それでもうまくいかないから、この時間は難しいんです。

「特にないです」と言われた日

初回の面談の終わりに、僕はよくこう聞いていました。

「何か、質問はありますか」

返ってきたのは、こうでした。

「特にないです」

そして、沈黙。

僕は、その沈黙に耐えられませんでした。「最初は分からないことも多いと思うけれど」「このチームでは、こういう進め方をしていて」と、また自分から話し始めました。

あとから考えると、相手はまだ、僕がどんな上司なのかも分かりません。どこまで話していいのか、話したことがどう受け取られるのかも分からない。そんな相手に、いきなり「何かありますか」と大きな箱を渡していたんです。

以前、僕自身が会議で「特にありません」と答えた日のことを書きました。今度は、それを言われる側でした。

同じ言葉でも、意味は一つではありません。

本当に何もなかったのかもしれない。

まだ、言葉になっていなかったのかもしれない。

僕の話が多くて、入る場所がなかったのかもしれない。

答えを決めることは、できません。ただ、一つだけ言えることがあります。

相手が話さなかったのではなく、僕が、相手が話せるようになるまで待てなかった。相手の言葉が出てくる前に、僕が空白を埋めていた。

初回の「特にないです」を、本音がない、主体性がない、と測ってはいけなかったのだと思います。

初回の1on1で、僕は「測ろう」としていた。本当は、「ゼロ点を合わせる」時間だったのに。

新しい部下との1on1は、測る前に「ゼロ点合わせ」

僕の仕事では、何かを測る前に、まず基準が合っているかを確認します。ゼロがずれた状態で測れば、どれだけ細かい数字を出しても、結果そのものがずれてしまうからです。

人との関係も、少し似ていると思います。

その人の「普通」を知らないまま、僕はいきなり、良し悪しを測ろうとしていた。

ゼロ点合わせとは、その人を評価する前に、その人にとっての「普通」を知ろうとすることです。

よく話す人なのか、考えてから話す人なのか。分からない時にすぐ聞く人なのか、ある程度調べてから聞く人なのか。緊張すると黙る人なのか、普段から静かな人なのか。

その人の「いつも」を知らないままでは、目の前の沈黙が、不安なのか、集中なのかさえ分かりません。

そして大事なのは、この比喩の向きです。

合わせるのは、相手ではありません。相手を見る、僕の物差しの方です。

相手を測定して、タイプを見抜こうという話ではない。僕の側の基準がずれたままだと、これから先のすべてを測り間違える。だから最初に、自分の物差しを合わせておく。そういう時間です。世代というひとくくりの物差しで測ろうとして外した話は、Z世代の部下がわからなかった時の記事に書きました。

相手を測るのではなく、相手を見る自分の物差しのゼロ点を合わせるという対比の図

前任者から、その人の仕事ぶりや性格について聞くことはあります。ただ、それを答えにはしないようにしています。

前任者が見たのは、前任者との関係の中にいた、その人です。僕との関係では、違う姿が見えるかもしれない。

引き継ぎメモは、前の人が見た景色のメモくらいに置いておく。

その人のゼロ点は、相手と話し、やり取りを重ねながら合わせていく。今は、そう考えています。

もう一つ、あとから気づいたことがあります。その人の「普通」には、性格や話し方だけでなく、話し始めるまでに必要な時間も含まれていました。

すぐに話せる人もいる。少し雑談をしてから話せる人もいる。いつもの30分が終わる頃に、ようやく本当の話が出てくる人もいる。

ゼロ点合わせとは、その人が何を話すかだけではなく、どのくらいの時間と空気があれば話せる人なのかを、知ることでもありました。

そして、ゼロ点合わせは、初回の30分で完成するものではありません。関係が続く中で、少しずつその人の「いつも」が見えてきます。

「いつも」が見えてくると、できることが増えます。相手の元気がない気がする日。言葉が少し重い日。何かを抱えていそうな空気がある日。そういう時は、いつもより長めに時間を確保するようにしています。

本当に聞きたかった話は、こちらが用意した30分の前半に出てくるとは限らない。

普段の時間を過ぎたあたりで、少し空気が緩んで、話しやすくなることがあります。そこで答えを急がずに待つ。あるいは最後に、念押しでもう一度だけ言葉を置きます。

「他には、ありませんか」

すると、それまでの話とは別の、本当に気になっていたことが出てくることがあります。そこから話が始まって、面談を30分延長したこともあります。

初回に「何か質問ありますか」と聞いた時は、沈黙しか返ってきませんでした。言葉はほとんど同じなのに、返ってくるものが違う。

質問が悪かったのではない。その質問を置くまでに、相手が話せる空気になっていなかった。

ナギ(心の声)
白状すると、これに気づくまで、沈黙は「埋めるもの」だと思っていました。今は、沈黙の何割かは「相手が言葉を探している時間」に見えます。見え方が変わると、待てるようになりました。

ナギ(心の声)

最初の30分で、理解を完成させなくていい

では、今の僕が初回の1on1で何をしているか。少しだけ書きます。ただし、これは正解の手順ではなく、話しすぎていた僕の、自分向けの工夫です。

まず、自分のことを少し話します。どんな進め方をするのか。どのくらいの段階で相談してほしいのか。分からない時に、どんなふうに声をかけてもらえばよいのか。武勇伝ではなく、相手に話してもらうための材料として、自分の取扱説明書を先に少し出す感覚です。上司が先に少しだけ弱いところを出すと場が変わる、という話は心理的安全性の記事にも書きました。

そのうえで、意識しているのは「7割以上は部下に話してもらおう」という目安です。

「7割話してもらう」は、部下を測る数字ではありません。僕が話しすぎていないかを見るための、自分側の目盛りです。

7対3が正解という意味ではありません。初回にそこまで話してもらえないことも、普通にあります。それでも目盛りがあると、「今日もまた説明会をやっていないか」と、途中で気づけるようになりました。

そして何より、あの30分で、相手を理解しきる必要はありませんでした。

初回1on1の成果は、本音を聞けた量ではない。次も話してよいと思ってもらえたかどうかだ。

最初の30分で理解を完成させようと上司が話し続ける面談と、次の30分につながる面談の対比の図

だから、今なら、初回の面談をこう締めたいと思います。

「今日は全部話さなくて大丈夫です。また次に、続きを聞かせてください」

最初の30分の仕事は、聞き出すことじゃない。次に話せる相手になることだった。

最初の30分で相手を理解するのではなく、次の30分につなぐ。それだけで、初回の1on1は、もう十分に仕事をしています。

📒 持ち帰り用に、3行だけ

  • 初回の1on1に正解の質問はいらない。先にやるのは、自分の物差しのゼロ点合わせ
  • その人の「普通」には、話し始めるまでに必要な時間も含まれる
  • 初回の成果は本音の量ではなく、「次も話してよい」と思ってもらえたか

※この記事は、一人の管理職の一次体験です。登場するやり取りは、特定の個人が分からないように再構成しています。

— Calmly. Surely. —


もう一歩、深く知りたい人へ

初回で本音を聞き出すための本ではありません。1on1を「上司が話す時間」ではなく「部下が経験を言葉にして、次に活かすのを支える時間」として捉え直し、対話を続ける仕組みを考えるための一冊です。質問の正解集を探す前に、この時間が何のためにあるのかを整えたい人に合うと思います。

増補改訂版 ヤフーの1on1 表紙
▶︎ 1on1を「対話を続ける仕組み」として考える

増補改訂版 ヤフーの1on1 部下を成長させるコミュニケーションの技法

本間 浩輔 著(ダイヤモンド社)

1on1を、部下の経験学習を支える時間として位置づけた定番の一冊です。テクニックの列挙ではなく「何のためにこの30分があるのか」から組み立てられているので、本記事の「ゼロ点合わせ」の先=2回目以降の続け方を考える時の土台になります。

  • 1on1は上司が話す時間ではない、という前提の整え方
  • 部下が経験を言語化するのを、聞いて支える技法
  • 導入・継続のつまずきに対応した増補改訂版
Amazonで見る →

関連記事

※本記事にはアフィリエイトリンクが含まれます。本記事のテーマに合うと判断した書籍を紹介しています。

🧭 次に読むおすすめ

この記事とテーマの近い順に選んでいます

部下に退職代行を使われたら。上司と部下の間にあった「代理人を立てられた距離」を考える
関係性マネジメント

部下に退職代行を使われたら|“代理人を立てられた距離”を考える40代課長の話

管理職のためのエニアグラム活用術|40代が人を動かす実践ガイド
関係性マネジメント

管理職のためのエニアグラム活用術|40代が人を動かす実践ガイド

部下の点数を、下げた側になった日。机を挟んで評価シートを渡す直前の、静かな面談室
関係性マネジメント

部下の点数を、下げた側になった日|"評価の椅子"を運ぶ40代課長の話