抜けると困る人にも、外を見る話をします
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部下からキャリアの話を聞くとき、僕はこの会社の外で働くという話もします。転職サービスを紹介することもあります。
ただ、外へ行った方がいいとも、ここに残った方がいいとも、こちらからは決めません。何が近道かは、本人が何を優先したいかで変わるからです。
抜けられたら、僕は困ります。困るのは本当です。それでも、その困り方は、本人の答えとは分けています。
その分け方が、毎回うまくいっているかは、正直わかりません。
聞かれたら、この会社の外の話もします
実際に並べているのは、三つです。求人を眺める、社外の知人に聞く、担当者と話す。
どれも、手段として並べるだけです。やってみた方がいい、とは言いません。眺めるだけで終わってもいいし、途中でやめてもいい。並べたあとで、どれを使うかは本人が決めます。使わないという結論も、そこに入ります。
ここで言う「外」は、仕事のやり方の外ではなく、この会社の外で働く、という意味の外です。
外を見ないことを、悪いこととして書くつもりはありません。今の場所で積むものがある人は、そちらの方が近いこともあります。
そもそも、話しかけられた段階では、辞める話とは限りません。僕の場合は、「今の役割をどうしたいか」の相談として来ることの方が多いです。その延長で、会社の外という言葉が出てくることもある、という順序です。
直前に書いたのは、僕が相手への説明を短くしていた話でした。今回は、どこまでを僕が決めるか、の話です。
その場で答えを出すのを、やめました
こちらの答えを言ってしまうと、そのあとの話が全部それへの返事になります。
本音を言えば、口が勝手に動きかけます。「いや、うちでもまだできることは」のあたりまで、何度も出かかりました。そのたびに、途中でやめます。相手からすれば、ただ間が空いているだけに見えていたと思います。
早く楽にしてあげたい、というのとは少し違います。宙ぶらりんのまま話を置いておくのに、僕の方が耐えられないだけです。
ナギ
言ってしまったあと、相手は「そうですね」と返してくれました。その「そうですね」が、本当にそう思ったものなのか、僕が言ったから出たものなのか、いまだに分かりません。
僕の見立ては、僕に見えている分しかありません。それを最初に置くと、本人が望んでいたものは、こちらの見立ての中に隠れてしまいます。
決めないかわりに、聞くことがあります。僕が出しているのは、順番を聞く質問だけです。
聞いているのは、何を一番優先したいか
代わりに聞いているのは、望みの中身と、その順番です。
聞きたいことは、だいたい三つに分かれます。
- 上がりたいのか。役割や責任を、今より上げたいのか。
- 移りたいのか。新しい分野へ行きたいのか。
- 離れたいのか。今の仕事の、何から離れたいのか。
並べる順番は決めていません。相手が話しやすいところから聞きます。三つ全部を、一度で聞く必要はありません。その日は一つで終わることもあります。続きは、次に話すときでいい。
そのうえで、「この中で、いちばん優先したいのはどれですか」と聞きます。
ここで、二つ以上が出てくることがあります。上がりたいし、離れたい。移りたいけれど、今の役割も手放したくない。同時には成り立たないものが並ぶことは、珍しくありません。
望みが二つ出てきたときは、どちらを優先したいかまで聞きます。
「その二つなら、どちらを優先したいですか」。この一問で、返ってくるものが違ってきます。
返ってきた順番で、こちらが出すものも変わります。
上がりたいが一番なら、今の職務で実績を積む方が近いこともあります。その場合は、社内の話をします。
離れたいが一番に来たときは、もう一段だけ聞きます。今の仕事の中身なのか、量なのか、それ以外なのか。離れたい対象が今の職務そのものなら、この会社の外を見る方が早いこともあります。その場合は、外の話をします。
どちらとも決まらないなら、両方を並べたままにしておきます。並べたままにしておくのも、こちらの仕事のうちです。
🗨 二つ出たら、もう一問だけ聞く
- 聞く言葉:「その二つなら、どちらを優先したいですか」
- 使うとき:望みが二つ以上出てきて、その二つが同時には成り立たないとき
- 聞いたあと:返ってきた順番に合わせて、こちらが出す情報を変える
残ってほしい、は僕の側の事情です
残ってほしい、と思っています。それは、僕の側の事情です。
困るのは本当です。中身は、二つあります。一つは、引き受けてもらっていた分の段取りを、僕が組み直す時間がいること。もう一つは、経緯を知っている人が一人減るぶん、共有し直すところから始まること。
どちらも、僕の手元の話です。
ナギ
黙っていれば、話を聞くのが上手い上司の顔で通せます。実際、そう見えていた方が、僕には都合がいい。
ただ、その顔のまま聞いていると、自分がどこで力を入れているかが、自分でも見えなくなります。声の調子とか、次に出す情報の選び方とか、そういうところに出ます。
一年後に本人がどこにいるかは、本人が決めることです。そこへ僕の困りごとを混ぜてしまうと、聞いているつもりで、引き止めていることになります。質問の形をしているだけで、中身は僕の希望です。
残ってほしいのは、僕の事情です。その人が何を優先したいかとは、別のところに置いておきます。
僕自身が立ち止まっていた頃の話も前に書きました。あの記事で書いたのは、決めない、というところまでです。今回はその先で、決めないと言いながら残っている、僕自身の都合の話です。
見に行ったあとで、戻ってきた人がいます
見に行った人が、そのまま辞めるとはかぎりませんでした。
一人のメンバーと話していて、外を見ることが手段になりそうだと感じたことがありました。それで、その話をしました。実際に見に行ったようです。
しばらく、その話題は出ませんでした。そのあとで、こういう言葉が返ってきました。
「見に行ってよかったです。そのうえで、今の場所でもう少しやってみます」
正直に言うと、聞いたときは、少しほっとしました。困らずに済んだ、という安心です。いい話に聞こえるとしたら、そこは違います。僕は、自分の手元が楽になったことに、まず反応していました。
辞めるつもりで相談に来ている、という僕の前提の方が、外れていました。
僕が外の話をしたから戻ってきた、とも思っていません。見に行って、比べて、決めたのは本人です。僕がしたのは、並べたところまでです。
同じようなことは、何度かありました。そのまま外へ移った人もいます。理由は人それぞれで、仕事の中身より、個人の事情が大きかった人もいます。
その日から、僕はこの話を「辞める話」の前提で聞かなくなりました。
まとめ|残ることも、選んだ結果でいい
僕がつくりたいのは、本人が選び直せる状態です。
話を聞くときにやっているのは、この三つです。この会社の外の話も並べる。こちらからは決めない。望みの順番を聞く。
うまく分けられているかは、そのときどきです。話し終わったあとで、今のは引き止めに近かったかもしれない、と思うこともあります。口が動きかけるのも、たぶんこれからも続きます。
僕の都合は、消えません。消えないまま、持っています。持ったまま、聞く側に座ります。
残ることも、外へ出ることも、本人が決めた結果であってほしい。僕の都合は、その決め方の中には入れません。
※この記事は、一人の管理職の一次体験です。登場するやり取りは、特定の個人が分からないように再構成しています。状況や時期も、個人が分からない形に整えています。
— Calmly. Surely. —
僕が、相談の中で挙げることがある2社
僕は、本人の話を聞いて、外を見ることが一つの手段になりそうなら、転職サービスを紹介することがあります。
もちろん、登録することが答えではありません。求人を眺めるだけでもいいし、社外の知人に話を聞くだけでもいい。
僕自身も、この会社の外で自分の値段を一度調べています。だから、紹介するときは、自分がやってみたこととして話します。
この記事を読んでいるのは、たぶん相談を受ける側の人だと思います。あなた自身が外を見るときも、僕が挙げるのは同じ2社です。
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