役職定年は、予測できる衝突だ。 − 暮らしの核を守る「潰れしろ」の話 −
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正直に言うと、僕は役職定年後の収入を、そこまで強く心配していません。
早い時期から積立を続け、定年後の資産についても、自分なりに数字を置いてきました。十分かどうかは将来にならなければ分かりませんが、少なくとも「何も見えない」という状態ではありません。
だから役職定年という言葉を聞いても、僕の中では恐怖より、確認事項に近いのだと思います。
なぜだろう、と考えてみました。答えは、たぶんこうです。
僕が役職定年をそれほど怖がらずに済んでいるのは、強いからではない。先に、衝撃を吸収する余白を作ってきたからだ。
気づかないうちに、僕は暮らしの中へ「潰れしろ」という余白を作っていました。今はまだ、そういう名前のものがある、とだけ言っておきます。
📒 先に、この記事の予告を3行
- 役職定年は、予測できる衝突。予測できるなら、設計できる
- 安心して「残る」ための余白をつくる話
- だからまず、自分の会社の数字を一つだけ確認してみる
もし「役職定年 年収」で検索してここへたどり着いたなら、この先にあるのは、あなたの側の、段取りの話です。
役職定年で、報酬はどう変わるのか
先に結論から書きます。役職定年で報酬面で変わり得るのは、役職や等級にひもづく部分です。「年収が役職の分だけ下がる」という単純な話ではなく、基本給や等級、手当、賞与など、変わり方は会社ごとにかなり違います。
だから、一般論の平均で怖がるより、まず自社の数字を一度知る。それだけで、漠然とした不安が、設計できる数字に変わります。
自社の制度で、一度だけ確認しておきたいこと
- 役職や等級が変わると、報酬のどの部分(基本給・手当・賞与・等級)が変わるのか
- 変わるとしたら、いつ、どのくらいの時期からか
- 今の固定費のまま、その変化を吸収できるか
参考までに、公開されている調査を一つだけ紹介します。
ダイヤ高齢社会研究財団の「50代・60代の働き方に関する調査」(2018年)では、役職定年を経験した、定年後も働く60〜69歳男性851人(60代前半405人・60代後半446人)に、役職定年前後の年収がどう変わったかを、当時を振り返る形で尋ねています。
9割超が年収減を経験しています。最も多かったのは、以前の50〜75%の水準になった人で、約3割。50%未満まで下がった人も、約4割いました。
ただし、少し前の調査で、対象も定年後に働く男性に限られます。当時を振り返って答えた数字であり、現在のあなたの減額幅を示すものではありません。
だからこそ、一般論のレンジより、自分の会社の資料です。衝撃の大きさの目安を頭に置いたら、あとは自社の数字で確かめる。それで十分です。
もう一つ。転職サービスdodaの「企業のミドルシニア層の採用に関する調査(採用実態・人事制度編)」(パーソルキャリア・2025年12月発表)では、ミドルシニアの採用実績がある企業の採用担当者505人に人事制度の見直し状況を聞いたところ、「1年以内に見直した制度」のトップが役職定年で、42.4%でした。これは、42.4%の会社が廃止したという意味ではありません。役職定年を含むミドルシニア向け制度を、各社が見直し始めていることを示す数字です。
数字の役目は、衝撃の大きさをあらかじめ知っておくことです。設計は、そこから始まります。
「潰れしろ」という考え方
ここで、少しだけ技術の話をさせてください。
車は、乗る人を守るために、車体の一部を意図して変形させます。F1などの競技車両でも、考え方の根本は同じです。衝突の衝撃を、ゼロにすることはできません。だから、狙った場所を、狙った順番で潰し、乗員のいる空間には大きな変形を残さない。そう設計します。
潰れることは、失敗ではありません。守るための設計です。
車は、乗る人を守るために、わざと潰れる場所を持っている。役職定年後の暮らしにも、それが要る。僕はそう考えるようになりました。
技術の言葉ではクラッシュストローク。この記事では、少し柔らかく「潰れしろ」と呼びます。
潰れしろは、衝撃を受けても、暮らしの核まで変形させないために、先に用意しておく余白です。
大事なので、もう一つ。ここで潰すのは、人でも、技術でも、誇りでもありません。収入の変化を直接暮らしへ届かせないために、先に作っておく余白です。
この考え方を、役職定年にあてはめてみます。自分の会社に役職定年制度があるなら、それは予測できる衝突。年収が変わることは、その衝撃。潰れしろは、その衝撃を吸収して、暮らしの核を守る余白です。
役職定年は、予測できる衝突だ。予測できるなら、設計できる。
念のため書いておくと、潰れしろは、大きければ大きいほどよい、というものでもありません。車と同じで、どこに、どのくらいの余白を、どう配置するか。その構造全体が大切です。
僕が作ってきた、三方向の潰れしろ
ここからは、僕自身の話です。役職定年のために始めたわけではないのですが、振り返ってみると、すでに三つの方向で潰れしろを作っていました。
先に言っておくと、これは、早く始めた人だけの話ではありません。まだ始めていなくても、今から一つずつ、小さく始められます。まずは、固定費を眺めることから始めてもいい。そのくらいの温度で読んでください。
家計|暮らしを急に変えなくて済む時間
現金で持つ余力を残しながら、長期の積立や、配当が入る資産も少しずつ持ってきました。ただ、大切なのは、資産額そのものよりも、給与が少し変わっても、その月から生活の核が揺れない状態です。毎月の固定費を把握しておくことも、潰れしろの一部だと思っています。
収入が変わっても、家族の暮らしを急に変えなくて済む時間。それが、家計の潰れしろです。
定年後の資産を試算した表を見た時、役職定年で収入が下がっても、暮らし全体がすぐに崩れるわけではないと分かりました。もらえるなら、多い方がいい。それでも。
ナギ(心の声)
具体的な金額は、ここでは出しません。見せたいのは金額ではなく、余白がどこにあるか、という設計の方だからです。
市場価値|肩書きが外れても残るもの
会社の肩書きがなくても説明できるものを、少しずつ増やしてきました。技術的な課題を整理する力。異なる専門領域をつなぐ力。複数の関係者の意見をまとめ、仕事を前へ進める力。さらに、業務を自動化したり、データやAIを使って仕事のやり方を変えたりする経験も積んできました。
役職定年で変わるのは、会社の中の役割と報酬だ。自分の市場価値まで、同じ日に下がるわけではない。
ただし、これも断定はできません。自分に力が残っていることと、外からその力に値段が付くことは、別の話だからです。会社名と肩書きを外した自分が、何を説明できるか。ここは、頭の中だけでは答えが出ません。
だから僕は、その問いを、一度、紙に書き出してみました。できること、任されてきたこと、続けてきたこと。ただ箇条書きにするだけです。それでも、自分に残っているものの輪郭が、少し見えてきます。エージェントも診断も使わずに、今日できることです。
もう少しだけ整理したくなったら、肩書きが外れても自分に何が残るかを、質問に答えながら並べ直せる1分の自己点検を置いてあります。順位は付きません。現在地が並ぶだけです。
副収入|会社以外から入る、小さな入口
このブログも、その一つです。今のところ、会社員の給与を置き換えるような規模ではありません。まだ、芽と言った方が正しいです。
それでも、金額が小さくても、「会社以外の誰かが、自分の作ったものや価値にお金を払ってくれる」という経験には、意味があると思っています。副収入の芽がやっているのは、収入の入口を一つ増やすことです。会社に残るかどうかを、焦らず決められる状態を作る。これも、一つの潰れしろです。
周囲がどこまで準備しているか、本当のところは分かりません。僕自身も、会社で資産形成の話はしません。ただ、準備する側になって分かったのは、数字が見えているだけで、役職定年という言葉の怖さはかなり小さくなる、ということでした。
選択肢を、二つにしないために
怖いのは、年収そのものより、選択肢が二つしかなくなることかもしれません。
役職を外れたあとも、以前と同じような影響力を持とうとしているように見える先輩がいます。正直に言えば、「自分は、あのようにはなりたくない」と思うこともあります。
でも、その人の選択を、外から見ただけの僕には判断できない。自分が同じ立場なら、僕も収入を選ぶかもしれない。
外からは執着に見える選択が、本人にとっては暮らしを守るための選択かもしれない。そう考えると、簡単には批判できなくなります。
だから僕は、役職を外れた時に、選択肢が二つだけにならない状態を、先に作っておきたいと思いました。
余白があれば、収入と周囲からどう見られるかの二択だけを迫られずに済む。
余白は、選ぶ余地を、自分に残しておくためのものです。
まとめ|潰れしろは、残り方を選ぶための余白
役職定年は、予測できる衝突です。予測できるなら、設計できる。家計の余白、肩書きの外に残る力、副収入の芽。この三方向の潰れしろを、慌てずに配置しておく。
変化は避けられません。でも、設計しておけば、暮らしの核まで揺らさずに済みます。潰れしろは、残り方を自分で選ぶためにあります。
📒 休みに入る前に、机へ置いておく一行
- 潰れしろは、逃げ道じゃない。安心して「残る」ための、余白だ。
ここまで先のことを考える40代は、少数派かもしれません。心配性にも、たまには仕事があるようです。
僕はまず、自分の会社の制度資料を一度だけ開いて、役職や等級が変わった時に、報酬のどの部分が変わるのかを確認してみることにしました。必要な数字だけ確認したら、いったん閉じる。休みに入る前に、心配を一つだけ数字へ変えて、机に置いておく。それくらいで、いいのだと思います。
役職定年は、年収の設計図を、書き直す合図です。
この夏、お盆まであと少し。不安ではなく、段取りを一つ。
※この記事は、一人の会社員の一次体験と、公開された調査の紹介です。制度の運用や減額の幅は会社によって大きく異なります。実際の判断は、必ず自社の制度資料や、必要に応じて専門家の情報で確認してください。
— Calmly. Surely. —
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