黒字リストラ2万人時代 あなたには"二つの値札"がある。選ばれる前に、市場の値札を確かめておく

(更新: ) 著者: ナギ
#管理職 #黒字リストラ #早期退職 #40代管理職 #市場価値 #キャリア #会社依存 #リスキリング
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黒字リストラ2万人時代|あなたには二つの値札がある。市場の値札を確かめておく

会社は黒字なのに、なぜ人を減らすのか

2025年度、早期・希望退職を募集した人数は約2万人(2万781人)にのぼりました。前年度の約2.5倍です。そして驚くのは、その約8割が、赤字ではなく黒字の企業だったことです(東京商工リサーチ調べ)。

「うちは黒字だから大丈夫」と思っていた。でも、ニュースを見るたびに、ふと不安がよぎる。

その不安は、おかしなことではありません。むしろ、40代で管理職をしている人ほど、感じて当然の感覚です。

正直に言えば、昔の僕なら「黒字なのに、なぜ?」と思ったはずです。でも今は、少し違って見えます。会社は、今の黒字より、5年後・10年後に生き残れるかを見て動いている。だから、黒字リストラが起きる理由そのものは、理解できます。

ただ、理解できることと、社員側が受け入れられることは、別の問題です。

ナギ
この記事は、企業批判でも、転職を煽る話でもありません。現役の40代管理職である僕(ナギ)が、会社への依存度を下げて、変化に強くなるためにやってきたことを、一次情報で書きます。

ナギ

あなたには、「二つの値札」がある

結論から言います。人には、二つの値札があります。社内での評価という「社内の値札」と、市場での評価という「市場の値札」です。

そして、黒字リストラは、この二つがズレている人から、静かに選ばれていきます。社内の値札は高いのに、市場の値札が見えていない人。そこが、いちばん危うい。

社内の値札しか見ていないと、市場の値札に驚く日が来る。

二つの値札|社内価値と市場価値のギャップを可視化した図
図1:人には二つの値札がある。社内の値札(会社での評価・肩書き)と、市場の値札(社外での評価)。多くの人は、社内の値札しか見ていない。

なぜ、人は社内の値札しか見なくなるのでしょうか。

理由は、構造にあります。人は毎日、会社に行く。評価するのも上司。給料を払うのも会社。だから、気づかないうちに、社内の値札だけを見るようになる。これは意志が弱いからではありません。毎日の環境が、自然とそうさせるのです。

誰だって、そうなります。だからこそ、選ばれる前に、もう一枚の値札を自分で確かめておく必要があります。

明日は、自分が「選ばれる側」かもしれない

ここで、管理職という立場の、二重さについて書きます。

40代の管理職は、会社の決定を現場に伝える「伝える側」です。でも同時に、自分も「選ばれる側」になりうる存在でもあります。

伝える側であり、選ばれる側でもある。この二重さが、40代管理職のいちばんの不安かもしれません。

まず、伝える側について。リストラそのものでなくても、上層部が決めた方針を、現場に説明する立場になることは何度もあります。正直、「本当にこれがベストなのかな」と思うこともあります。でも、その時に大事なのは、自分の意見を通すことよりも、現場が納得できる形に翻訳することです。

ひとつ、学んだことがあります。悪い知らせほど、しっかり伝えるということです。

管理職は、悪い知らせから逃げたくなります。曖昧にぼかして、その場をやり過ごしたくなる。でも、曖昧に伝える方が、かえって傷を深くします。人は、悪い知らせそのものよりも、「本当のことを教えてもらえなかった」ことに、強い不信感を持つからです。

そうやって会社と現場の間に立っていると、いやでも見えてくるものがあります。会社という存在が、永遠ではないということです。

若い頃の僕は、「会社が続く限り、仕事はある」と思っていました。でも40代になると、見方が変わります。会社も、組織も、永遠ではない。だから、問いそのものが変わっていきました。「この会社に残れるか」ではなく、「会社の外でも通用するか」へ。

会社がなくなったら困る。ではなく、今の会社しか選択肢がないことが、怖い。

黒字リストラの構図|黒字でも人を減らす理由と、市場価値が見えない人から選ばれる図
図2:会社は黒字でも、5年後10年後を見て人を減らす。選ばれやすいのは、社内価値は高いが市場価値が見えていない人。

市場価値を確かめる方法は、転職だけじゃない

ここからが、出口の話です。結論を言うと、市場の値札を確かめることは、転職を決めることではありません。今いる場所で堂々と立つための、健康診断のようなものです。

最初に伝えたいのは、市場価値を知る方法は、転職だけではない、ということです。

僕自身がやってきたのは、こういうことです。ブログを始めました。副業も始めました。社外の経営者と話す機会を作りました。そして、転職サイトにも登録しています。

転職サイトは、いちばん最後です。しかも、今すぐ転職する気はありません。でも、自分の市場価値を知らないままでいる方が、よほど怖い。僕にとって転職サイトは、転職のための場所というより、市場から見た自分の値札を確認する場所です。健康診断と同じです。

ひとつ、伝えておきたいことがあります。

もし、市場の値札が思ったより低く見えても、それは、あなたの価値が低いという意味ではありません。これまで、見せ方を会社の中だけに最適化してきた、というだけです。今からでも、調整できます。だから、怖がらずに、一度だけ覗いてみてください。

僕が実際にやっている、いちばん手軽な方法は、転職サイトを「転職活動」ではなく「健康診断」として使うことです。

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(コラム)「頑張っただけじゃダメですか?」

ここで、1on1での、ある一言の話をします。今回いちばん書きたかった部分です。

部下から、こう言われたことがあります。「頑張っただけじゃ、ダメですか?」

まず言いたいのは、頑張っていることは、事実だということです。だからこそ、その努力を、成果につながる方向へ向けたい。本気でそう思います。

実は、僕自身も、若い頃は「あんなに頑張ったのに」と思っていました。だから、その気持ちは、痛いほど分かります。

いちばん苦しいのは、こういう時です。頑張った。本当に、全力で走った。でも、求められていた成果とは、少しズレていた。本人は全力だったぶん、その「ズレ」を認めるのが、よけいにつらい。

これは、誰の身にも起きます。能力の問題ではなく、努力の「向き」の問題だからです。

そのうえで、ひとつだけ、伝えなければならないことがあります。市場は、努力ではなく、成果を見るということです。

会社に依存しているほど、「頑張ったことを評価してほしい」と思います。市場を見ているほど、「成果で評価される」と理解しています。これは、まさに二つの値札の話そのものです。

頑張ったことと、評価されることは、別です。

だから僕は、部下と話すとき、頑張ること自体より、「成果につながる頑張り方」を一緒に考えるようにしています。努力を否定したいのではありません。努力の向きを、一緒に調整したいのです。

そして、これは、気づくのに遅すぎるということがありません。40代の今が、ちょうど分岐点です。ここで二つの値札に気づけたなら、それは十分に間に合うタイミングです。

お金は「冷静に判断するため」の備え

次に、お金の話を少しだけ。

お金は、自由を買うためのものではありません。冷静さを買うためのものです。

結論は、お金は、会社を辞めるための備えではなく、冷静に判断するための備えだということです。

順番に書きます。

まず、お金があると、選択肢が増えます。逆に、お金がないと、嫌でも会社に依存することになります。理不尽な異動も、納得できない評価も、「生活のために」飲み込むしかなくなる。

だからお金は、辞めるためではなく、冷静に判断するための余白なのです。お金の余白があるだけで、同じ出来事でも、ずいぶん落ち着いて向き合えます。

※ここから先はお金の話に触れますが、本記事は投資や税制の助言を目的とするものではありません。制度や数字は変わることがあります。具体的な判断は、必ずファイナンシャルプランナーや税理士など専門家にご確認ください。

ひとつ、安心してほしいのは、全部やる必要はない、ということです。順番に、少しずつでいい。僕も、一度に始めたわけではありません。たとえば、つみたて投資、iDeCo、現金の比率、住宅にかけるお金。こういったものを、少しずつ考えてきました。これは「必須リスト」ではなく、あくまで「僕が考えている例」です。

最後に、退職金について。受け取り方は、制度の改正によって、手取りが変わる場合があります。細かく詳しくなる必要はありません。ただ、一度、ファイナンシャルプランナーのような専門家に、自分の場合を整理してもらう価値はあります。知らずに損をするのは、もったいないからです。

依存先を、一つにしない

ここまでの話を、一つにまとめます。この時代の備えは、つきつめると4つです。健康、お金、外の人脈、学び続けること。中でも、外の人脈が大きいと感じています。

その前に、「依存」という言葉を定義させてください。

依存とは、失った瞬間に、立てなくなる状態のことです。

会社を失った瞬間に立てなくなるなら、それは依存です。会社の中だけにいると、その会社の常識が、世界の常識のように見えてきます。でも、外に出ると、まったく違う考え方に出会えます。それが、視野を広げてくれます。

では、依存先を増やすとは、具体的に何を持つことなのか。

依存先を一つにしない図|会社だけの一本足から、健康・お金・外の人脈・学びの四本足へ
図3:依存先が一つだと、変化に弱い。健康・お金・外の人脈・学びの4本に分散すると、どれかが揺れても立ち続けられる。

🛡 依存先を、一つにしない(4つの備え)

  • 健康:すべての土台。これを失うと、他のすべてが回らなくなる
  • お金:冷静に判断するための余白
  • 外の人脈:会社の常識を相対化する、外の空気
  • 学び続けること:市場の値札を、自分で上げていく手段

依存先が一つしかない状態は、危険です。人も、お金も、スキルも、つながりも。一つに集中すると、変化に弱くなります。逆に、いくつかに分けておくだけで、どれか一つが揺れても、立ち続けられます。

この「会社の外に呼吸口を持つ」という話は、別の記事(40代管理職が、誰にも言えなかった5つの本音)にも、思想として書きました。そして「なぜ、今から準備が必要なのか」は、役職定年がなくなる時代へにまとめています。この記事は、その「何を準備するか」の実践編です。

まとめ|会社だけを、信じるな

整理します。

会社を信じるな、ではありません。会社だけを、信じるなです。会社は、大切です。でも、自分の人生を最後まで守るのは、自分です。

会社は人生の一部。人生そのものではありません。

だから、会社の外にも、小さな保険を作っておく。その保険が、いざという時の安心になります。

市場の値札を知ることは、今の会社を辞める準備ではありません。今の会社で、安心して働くための準備です。

難しく考えなくて大丈夫です。まずは月に一度、自分の値札を見てみてください。それだけで、漠然とした不安が、少しずつ「備え」に変わっていきます。

会社に残る準備ではなく、どこでも働ける準備をする。その気持ちが一つあるだけで、明日からの景色は、少しだけ広く見えるはずです。

— Calmly. Surely. —


関連記事|会社の外に、軸を持つ

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