市場価値、調べてみた。 AIを使いこなす自分の値段は、社内の物差しでは測れなかった

(更新: ) 著者: ナギ
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AIを使いこなす自分の市場価値を、現役の40代課長が市場で調べてみた

先に、正直に言っておきます。この記事は、転職を勧める記事ではありません。

僕はいまも、同じ会社で課長を続けています。それでも一度、転職サイトに登録して、自分の職務経歴書を書いてみました。理由は一つ。外から見た自分が、いったいいくらに見えるのか。それが、どうしても気になったからです。

前回、AIに仕事を任せて、自分は判断に回る側になった話を書きました。手を動かすのはAI、人がやるのは「任せる・止める・承認する」。その席のことを、僕は監督席と呼んでいます。座ってみて思ったんです。この監督席に座る力は、社内ではなんとなく評価される。でも、社外から見たら、いくらの値札が付くんだろう、と。

“市場価値の測り方”を解説する記事は、もう世の中に山ほどあります。これは、そういう解説ではありません。現役の課長が、実際に登録して、職務経歴書の前に座ってみた記録です。あなたに勧める前に、僕が先に行ってきました。

ナギ
人間ドックは、どこも悪くない人でも受けますよね。市場価値も、それと同じだと思うんです。転職するかどうかは別にして、今の自分の数値を一度知っておく。この記事は「転職のすすめ」ではなく、「現在地の確かめ方」の話です。

ナギ

「社内の物差し」では、AIを使う力が測れない

なぜ、わざわざ外を見に行こうと思ったのか。

きっかけは、会社の外が少しずつ見えてきたことでした。AIを使い始め、ブログを書き、社外の人と話す機会が増える。すると不思議なもので、外の景色が見えるほど、逆に「今の自分は、外からどう見えているんだろう」が気になってくる。一つの会社にすべてを預けているのは、少し危ういな、という感覚もありました。

ここで、一つ言葉を置かせてください。

会社の中では、自分の価値は「社内の物差し」でしか測れません。社歴、役職、上司の評価。その物差しです。

この物差しは、よくできています。長く勤めれば目盛りが進むし、役職が上がれば数字も上がる。でも、決定的に測れないものがありました。AIを使いこなす力や、人をまとめるマネジメントの成果です。社内の物差しには、そこに目盛りがない。なんとなく「がんばってるね」とは言われる。でも、何点なのかは、誰も教えてくれません。

社内の物差しと社外の物差し|AIを使いこなす力やマネジメント成果は社内では測れず、市場でだけ目盛りがつく
図:社内の物差しと、社外の物差し。測る軸が違うだけで、どちらも必要。ただ、AIを使う力は市場でしか目盛りがつかなかった。

AIを使いこなす力には、社内の物差しに目盛りがない。

目盛りが付いているのは、社外の物差し、つまり市場のほうだけでした。だから僕は、その物差しを借りに行くことにしたんです。やったことは単純で、スカウト型の転職サイトと、エージェント型のサービスに、それぞれ登録してみました。転職するためではありません。自分の現在地を測る計器を、一度手に取ってみたかった。それだけです。

職務経歴書を書き始めて、一瞬、手が止まった

登録すると、当然ですが、職務経歴書を書くことになります。

ここで、最初の壁が来ました。一番止まったのは「成果」の欄です。

考えてみてください。専門のスキル、たとえば自分の手で作った具体的な実績は、まだ書けます。職種は違っても、「これを作った」「これを担当した」は、言葉にしやすい。問題は、マネジメントの成果のほうでした。

「問題が起きないように、先回りして手を打った」。「チームが回るように、段取りを整えた」。「部下が成果を出せるように、環境をつくった」。どれも、課長になってから一番力を入れてきたことです。なのに、いざ職務経歴書に書こうとすると、言葉にならない。問題が起きなかったことを、どう実績として書けばいいのか。分からなかったんです。

正直に言うと、カーソルが点滅したまま、手が止まりました。十数年やってきて、すぐに書けたのは、ほんの数行。「思ったより、何も書けないかもしれない」。そのとき、少しだけ不安になりました。社内では評価されてきたはずの動きが、社外の言葉に、うまく載らない。管理職になるほど、自分の成果が見えにくくなる。これは、ちょっとした発見であり、ちょっとした恐怖でした。

ところが、書き出したら、芋づる式に出てきた

ところが、違ったんです。

詰まったとき、書き方を一つ変えてみました。立派な成果を探すのをやめて、「当たり前だと思っていること」まで、全部書き出す。苦戦したこと、困ったこと、地味に改善したこと。順番も体裁も気にせず、とにかく書き殴る。そうしたら、不思議なことが起きました。

一つ書くと、そこから芋づる式に、次が出てくる。

職務経歴書を書き始めたら芋づる式に強みが出てきた|当たり前だと思っていた経験ほど市場では価値だった
図:書き始めた最初の一瞬は止まった。でも当たり前まで書き出したら、芋づる式に強みが出てきた。

📝 書き出してみたら、出てきたもの

  • 苦戦した案件を、課題を整理して、なんとかやり切った経験
  • 部下の強みを引き出して、成長を後押しした関わり
  • 他部署とのあいだに立って、こじれた話をまとめた調整
  • 地味だけど、仕組みを変えて、現場を継続的に良くした改善

並べてみて、はっとしました。当たり前だと思っていた経験ほど、実は、市場では価値になるものだったんです。自分の中で「こんなの、誰でもやっている」と値札を外していたものに、外の物差しを当てると、ちゃんと目盛りが付く。

このとき、一人では限界がありました。書き出した断片を、市場に通じる言葉に整えるのは、自分だけだと難しい。そこで、AIに手伝ってもらいました。ただし、頼み方にコツがあります。「市場では何と言うの?」ではなく、「これを、僕の強みとして表現してください」と投げたんです。すると、自分でも気づいていなかった強みを、向こうが言葉にして返してくれました。僕だけではきれいにまとまらない。AIだけでは、僕の経歴は書けない。これは、共同作業でした。その手応えの中身は、次の章につながります。

書けなかったんじゃない。まだ、言葉にしていなかっただけでした。

スカウトの値札は、思ったより、ちゃんと付いていた

そうやって仕上げた職務経歴書を登録すると、しばらくして、反応が返ってきました。スカウトや、想定の年収という形で。

正直に言うと、思ったより、ちゃんと値札が付いていました。少し、驚きました。

見えてきたことは、二つあります。

見えたこと①|これまで積んできたものは、外でも通用した

社内でだけ通じるローカルルールだと思っていた経験。その、けっこうな部分が、外でもちゃんと価値として認められていました。

見えたこと②|AIは、思っていたより前線だった

これは、自慢ではなく、自己認識のズレの話として聞いてください。自分では「AIなんて、まだまだ使いこなせていない」と思っていました。毎日、できないことだらけです。でも市場から見ると、AIに受け身で構えず、自分から取りに行っている人は、今はまだ、想像していたより少なかった。最前線にいるつもりなんて、まったくありませんでした。でも、外の物差しでは、思っていた位置とは違うところに、目盛りが付いていたんです。

ただし、ここは正直に書いておきます。これは、僕一人のケースです。あなたの値段は、あなたが見に行かないと分かりません。年齢も、職種も、タイミングも違う。だから、僕の数字に意味はありません。意味があるのは、「社内で当たり前だと思っていたことが、社外では希少だったりする。その逆もある」という、物差しが違うという事実のほうです。

ここまで読んで、自分の値札も見てみようかな、と少しでも思ったなら。僕が実際に使った計器を、下に置いておきます。転職のためではなく、自分を測るための道具として見てください。次の2つは、どれも登録が無料で、客観的に現在地を知るための計器です。

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見に行って、僕は今の場所に戻った

さて、ここまで読むと、「で、転職したの?」と思いますよね。

しませんでした。僕はいまも、同じ会社で課長を続けています。

でも、見に行く前と後で、はっきり変わったことがあります。感覚が、変わったんです。

市場価値を見に行って転職はしなかった|この会社しか知らないから、他にも選択肢があるその上でここにいる、へ
図:見に行って、転職はしなかった。でも「この会社しか知らない」から「選択肢を知った上で、今を選ぶ」へ変わった。

見に行く前の僕は、「この会社しか、知らない」でした。評価の基準は社内だけ。外にどんな世界があるのか、よく分からない。だから、選べる実感が、そもそもありませんでした。閉じた一本道を、ただ歩いている感覚です。

見に行った後の僕は、こう変わりました。

他にも選択肢がある。その上で、ここにいる。

同じ場所に立っているのに、足元の意味がまるで違います。選択肢を知ると、心に余裕が生まれる。今やれることが、かえってよく見えてくる。そして何より、「選び直した今」に、自分で納得できる。市場価値を調べる記事の多くは、「だから転職しよう」で終わります。でも、僕がたどり着いたのは、その逆でした。選択肢を知った上で、今を選ぶ。市場という鏡は、外へ逃げるための道具ではなく、今いる場所を選び直すための地図だったんです。

ついでに言えば、自分がいま取り組んでいることの方向性は、間違っていなかったんだな、という手応えも得られました。それだけで、月曜の朝が、少し軽くなりました。

値札を見に行ったのは、売るためじゃない

最後に、整理します。

僕が市場に値札を見に行ったのは、自分を高く売りつけるためではありませんでした。

値札を見に行ったのは、売るためじゃない。今の値段を、知らないままでいたくなかったからです。

これは、人間ドックと同じです。どこも悪くないと思っていても、一度数値を見ておく。知らない不安は、放っておくとどんどん膨らみます。でも、知ってしまえば、不安は「対策できる課題」に変わる。体の調子が悪いのに「大きな病気だったら怖いから」と病院に行かない。そういう人、けっこういますよね。市場価値も、まったく同じだと思うんです。

そして、もう一つ、正直に書いておきます。仮に、思ったより低い値札が付いたとしても、それは「今」の値段です。落ち込む必要はありません。むしろ、何を足せば目盛りが上がるのかが見えるだけでも、見に行く価値があります。高いか低いかより、現在地が分かること。それ自体が、次の一歩の地図になります。

だから、もしあなたが「気になるけど、見るのが怖い」と感じているなら。怖いなら、なおさら、一度見ておいたほうがいい

転職するかどうかは、値札を見てから決めればいい。見ないまま決めるより、ずっといいはずです。

その感覚を一度持つと、毎日の仕事の手触りが、静かに変わります。

他にも選択肢がある。その上で、ここにいる。

📝 自分の値札を、言葉にしてみる(ワークシート)

最後に、僕が職務経歴書でやったことを、そのまま試せる形にしておきます。やることは、点数を出すことではありません。自分の経験を「市場に通じる言葉」にする。それだけです。

まず、ノートでもスマホのメモでも、次の項目を書き出してみてください。立派なことを書こうとしないのがコツです。

📝 棚卸しシート(当たり前まで書き出す)

  • 苦戦したこと/困ったこと
  • うまくいったこと
  • 誇れる成果 TOP3
  • 感謝されたこと TOP3(部下・上司・他部署から)
  • 失敗したこと 3選
  • AIに任せたこと/自分が判断したこと

全部やろうとすると、手が止まります。だから、まず1つだけ書けばいい。おすすめは「感謝されたこと、ひとつ」です。管理職の成果は数字になりにくいけれど、誰かに感謝された記憶は、強みのありかを教えてくれます。

書き出したら、その内容をそのままAIに貼り付けて、こうお願いしてみてください。

「転職用の職務経歴書を作成しています。市場で強みが伝わるように言語化してください」

自分でも気づいていなかった強みが、言葉になって返ってきます。これは、転職するためのワークではありません。書き出したものは、誰かに提出するためではなく、自分の現在地を、自分自身の言葉で知るためのものです。

ひとつだけ、注意を。AIに貼り付けるときは、社外秘の情報や、勤務先・個人が特定される固有名詞は外しておくと安心です。中身ではなく、「どんな経験を、どう言葉にするか」を借りる。それだけで十分に役に立ちます。

— Calmly. Surely. —

📖 参考書籍|「市場価値」を、転職テクニックでなく”考え方”から

市場価値という言葉を、年収アップのテクニックではなく、「どう生きるか」の問いとして考えたい人に、いちばんおすすめの一冊です。物語形式で読みやすく、「自分の値段は、何で決まるのか」を根っこから捉え直させてくれます。僕が市場に値札を見に行こうと思えたのも、この本で”考え方”の土台ができていたからでした。

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「自分の市場価値は、技術資産・人的資産・業界の生産性で決まる」という、シンプルで強い考え方を物語形式で教えてくれる一冊。転職するかどうかにかかわらず、自分の値札の"中身"を理解したい人の土台になります。本記事の「社外の物差し」を、もう一段深く理解できます。

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この記事は、AIと働く時代に「自分の値打ち」をどう捉えるかを考える連載の一本です。

そもそも、なぜ僕が監督席の話から市場価値にたどり着いたのか。その前提になっているのがもう、自分だけではやらない(Copilot Coworkで監督席に座った話)です。「社内の値札」と「市場の値札」は別物だ、という気づきの原点は二つの値札(黒字リストラと、会社依存からの卒業)に書きました。

そして、値札を見て終わりにせず、自分を更新し続けるための地図が自分の保全計画(40代管理職の自己更新の地図)です。市場価値とは別に、自分の”更新の状態”(点検切れ・点検中・保全計画 稼働中)を点数で確かめたい方は、そこにある自己更新セルフチェックも使えます。


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