退職金を当てにしすぎないと決めた話 − 40代管理職の「最後の値札」 −
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以前、社内と市場、二つの値札の話を書きました。会社の中での評価(社内の値札)と、社外での評価(市場の値札)。人には、この二つの値札があるという話です。
実は、もう一つあります。
会社が、辞めるときに最後に出してくる値段。退職金です。
僕はこれを「最後の値札」と呼んでいます。そして、この値札には、ほかの二つと決定的に違うところがあります。
最後の値札だけは、自分では値段を決められない。
退職金を調べたとき、僕は別の角度でも考えてみました。「そもそも、この最後の値札を、当てにしていていいんだろうか?」と。すると、あれ?と思う景色が見えてきました。
先に言っておきます。これは「退職金を捨てろ」とか「今すぐ受け取って何かに回せ」という話ではありません。退職金は、もちろん大切です。これは、会社の最後の値札を当てにしすぎない生き方の話。そして、退職金の税金を解説する記事でもありません。
ナギ
自分では値段を決められない、たった一つの値札
結論から言います。退職金は、自分ではコントロールできない値札です。
正直に言うと、退職金を真剣に調べたのは、管理職になってからでした。若い頃は、ほとんど考えていませんでした。でも40代になると、その先(定年や、その後の働き方)を考える機会が増えます。その流れで、「そもそも、自分の退職金ってどうなっているんだろう?」と調べました。
調べて思ったのは、思ったよりコントロールできないということでした。
会社の制度で決まります。税制でも変わります。自分が頑張ったからといって、思うように増えるとも限りません。社内の値札や市場の値札は、自分の働き方や学びで少しずつ動かせます。でも、最後の値札だけは、ほとんど自分の手が届かない場所にあります。
管理職を続けていると、ひとつ癖がつきます。コントロールできることと、できないことを、分けて考える癖です。
退職金や税制は、完全に「できない側」です。降ってくるルールに文句を言っても、最後の値札は1円も変わりません。それより、一生実力を問われる時代(役職定年がなくなる時代の話にも書きました)に、自分で動かせるものへ力を使いたい。投資、副業、学び、健康。この辺りは、自分で動かせます。
文句を言う相手と、力を注ぐ相手は、分けたほうがいい。
会社が最後に付ける値札より、自分で積み上げる値札の方が、たぶん大切です。
その値札は、静かにルールが変わる
結論を言います。制度は、ずっと同じではありません。
これは、僕自身が体験したことです。
iDeCo(自分で積み立てる年金のような制度)を始めたとき、僕は受け取り方の計画まで立てていました。「この年齢でこちらを受け取って、この年齢で退職金を受け取る」と。出口まで決めて、安心していたんです。
でも、その前提が、途中で変わりました。
2026年から、退職金とiDeCoなどの受け取りに関わる調整のルールが見直されました。いわゆる「5年ルールから10年ルールへ」という変更で、2026年1月1日以降に受け取る退職金から適用されます(詳しくは国税庁の資料や解説記事を)。計算の細かい話は、ここでは踏み込みません。専門家や一次情報に当たるのが確実です。
僕が言いたいのは、計算式のことではありません。
出口まで決めて安心していたのに、その前提が、自分の知らないところで変わった。
これが、制度というものの正体だと思います。今のルールが、この先もずっと同じである保証は、どこにもありません。会社の状況次第で、最後の値札そのものが変わる可能性だって、ゼロではない。
だから、制度を理解することは大切です。でも、制度だけに依存するのは危険だと、僕は思っています。
※税制や退職金の制度は変わることがあり、最適な受け取り方は人によって違います。具体的な金額や手続きの判断は、ファイナンシャルプランナーや税理士など、専門家にご確認ください。本記事は制度の正確な計算を目的とするものではありません。
なぜ僕は、会社以外の足場を持ったのか
結論です。僕がNISAやiDeCoを始めたのは、老後資金のためというより、「会社以外の足場」を持つためでした。
正直に打ち明けると、最初は、会社の「脱出装置」の一つとして始めました。FIRE(経済的に自立して早期リタイアする生き方)に、少し憧れていたんです。
でも、やってみて分かりました。僕はたぶん、完全には降りられない人間でした。
何かしていないと、落ち着かない性分なんです。現に、こうして休日にブログを書いている。働くのが本当に嫌いな人間が、わざわざこんなことはしません(正直、執筆はけっこう大変です)。脱出装置を作っているうちに、自分が脱出したい人間ではないと気づく。少し笑える話ですが、これが本音です。
それでも、会社の外に足場を持ったことには、大きな意味がありました。会社の外に軸を持つ話は以前にも書きましたし、休日にブログを書いている理由はこちらにも。
やってみて思うのは、お金が増えること以上に、精神的な余裕の方が大きい、ということです。前にも書きましたが、お金は自由を買うというより、冷静さを買うものだと思っています。会社の最後の値札だけを見ていた頃より、ずいぶん落ち着いて、自分のキャリアを眺められるようになりました。
ひとつだけ、添えておきます。投資が怖い、という人もいると思います。その気持ちは自然です。いきなり大きく始める必要はありません。少額から、生活に影響しない範囲で。 投資は元本が保証されているものではなく、損をすることもあります。それでも「会社の外に、自分の足場を一つ」という発想だけは、持っておいて損はないと思います。
不安を消したのは、収入ではなくライフプランだった
結論を言います。お金の不安を小さくしたのは、収入アップではなく、ライフプランを整理したことでした。
先に、一番大事なことを書きます。
不安を消そうとは、思っていません。不安があるから、準備する。そのくらいの距離感が、ちょうどいい。
40代の不安は、リアルです。子育て、教育費、親のこと、自分の健康。挙げればきりがありません。でも、大きなイベントは、案外、計画に組み込みやすいものです。いつ頃、何に、どのくらいお金がかかりそうか。ざっくりでいいので並べてみる。すると、「どのくらい備えがあれば大丈夫そうか」の見当がついて、漠然とした不安が、かなり小さくなりました。
実際に作ってみると、両方が見えました。漠然と恐れていたほどではなかった部分と、逆に想像以上にかかりそうな部分(我が家の場合は、教育費の山がそうでした)。見えてしまえば、あとは備えるだけです。怖いのは、いつも「正体の分からない不安」の方でした。
お金の学び方も、少しだけ書いておきます。
僕は、自分でFP(ファイナンシャル・プランナー)3級を取りました。といっても、資格を取れと言いたいわけではありません。資格は要りません。基礎だけ知っておくと、判断が変わる、という話です。
取ってみて感じたのは、お金の知識が増えたというより、「自分は何が分からないのか」が分かるようになった、ということでした。何が分からないかが分かると、調べる場所も、誰に聞けばいいかも、はっきりします。お金の流れやルールの基礎が分かると、ニュースの受け止め方も変わります。
そして今は、その基礎を持った上で、AIに相談するのが速い、と感じています。3級レベルの基礎しかない一個人ですが、土台があると、AIへの聞き方も的確になる。お金の話で大事なのは「誰を信じるか」です。一人の意見だけで決めず、本やAIや専門家を、自分の頭で組み合わせる。それくらいでいいと思っています。
退職金は安心をくれる。でも、選択肢をくれるとは限らない
結論を、先に置きます。
退職金は、安心をくれるかもしれない。でも、選択肢をくれるとは限らない。
これから管理職になる人ほど、一度、確かめてみてほしいんです。自分の最後の値札が、今いくらで、将来いくらになりそうか(制度が今のままなら)。調べてみると、「あれ?」と思うことがあるかもしれません。
ここで、誤解してほしくないことがあります。
これは「今もらって何かに回した方が得」という、損得の話ではありません。退職金は、もらえる額も、税のかかり方も、自分では決められない。ルールが変われば、また動く。それくらい不確かなものに、人生の土台を、全部預けていいんだろうか。その問いの話です。
確かめた結果、人によっては、転職という選択肢が見えてくるかもしれません。大事なのは、人生のプランを、自分でコントロールすること。会社に縛られる必要は、ありません。
念のため、はっきり書いておきます。「今すぐ辞めろ」という話では、まったくありません。 ただ、選択肢が思ったより多くあると、知っておいてほしいだけです。選択肢があるという感覚そのものが、日々の安心になります。
では、何から始めればいいか。まずは「自分の最後の値札、今いくら?」を知るところからです。
📋 自分の退職金の「調べ方」(まずはここから)
- 就業規則・退職金規程を見る(多くの会社にあります。計算の考え方が書かれています)
- 人事・総務に聞く(言いにくければ「制度を確認したい」で十分。見込み額を教えてもらえることがあります)
- 企業型DC・iDeCoは運営機関のサイトで残高を見る(今いくら積み上がっているか、すぐ分かります)
数字を知るだけで、不安は「漠然」から「具体」に変わります。具体になった不安は、ずいぶん扱いやすくなります。
まとめ|会社は最後に値札を出す。でも、自分の値段は
整理します。
文句を言っても、最後の値札は変えられません。なら、変えられる側に力を注ぐ。これが、この記事で一番伝えたかったことです。
🏷 二つの値札
- 会社が決める値札:退職金/制度/税制 → 自分では動かせない
- 自分で育てる値札:スキル/人脈/副業/投資 → 自分で動かせる
社内の値札、市場の値札(二つの値札の話)、そして最後の値札。三つの値札のうち、自分で育て続けられるのは、「自分の値札」だけです。学び続けた経験、磨いたスキル、社外とのつながり、積み上げた資産。これらは、制度が変わっても、自分の手元に残ります。
退職金は、大切です。でも、退職金「だけ」を信じない。会社が最後に付ける一枚の値札より、自分で育てる値札の方を、僕は信じています。
退職金は会社からもらうもの。でも、その先の安心は、自分で作るものだと思っています。
— Calmly. Surely. —
関連記事|会社の外に、自分の値札を育てる
📖 参考書籍|不安を「計算」で小さくする
定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!
元・証券会社の企業年金コンサルタントと社労士による、45歳から始める老後設計の入門書。「漠然と不安がる」のではなく、退職金・年金・支出を計算で見える化する考え方が、本記事の"ライフプランを整理する"と地続きです。「投資が苦手ならしなくていい」と言い切ってくれる安心感も。
- 退職金・年金を"計算"で見える化する
- 45歳からでも間に合う老後設計
- 不安を煽らず、冷静に備える一冊
そして、市場の値札(社外での自分の評価)を一度確かめておきたくなったら、転職サイトを"健康診断"として使う手もあります。今すぐ転職する必要はありません。自分の値札が外でどう見えるかを知るだけで、選択肢の感覚が変わります。
登録しておくだけでスカウトが届く。3ヶ月に1回ログインして提示年収を眺めるだけでも、市場から見た自分の値札が分かる。最後の値札だけに頼らず、自分で育てる値札を確かめる"健康診断"として
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- 選択肢があるという感覚が、日々の安心になる
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