後始末は、したつもりでいた。 − 抜けていた"人への一言" −
あの日、僕がやったこと。
- 原因を見つけた(僕の確認が足りず、条件が一つ抜けていた)
- 影響がどこまで及ぶかを整理した
- 必要なところへ報告した(「こちらの確認不足でした」)
- 同じことが起きないように、手順を直した
この目録に、やり直しをしてくれた本人への一言が、ありません。
後始末には、仕事を直す分と、人に返す分の二つがあります。当時の僕は、前の方だけを済ませて、「対応した」と思っていました。
仕事の処理は、終えたつもりでした。でも、人への一言だけが残っていました。
部下は、何も間違えていなかった
やり直しの原因は、すべて僕の確認不足でした。
ミスに気づいたあとの処理は、必要なことをやったつもりでした。抜けていたのは、その後です。
依頼の時点で、僕が確認しておくべき条件が一つ抜けていました。仕事がある程度進んだあとでそれに気づき、部下は一度やった仕事をやり直すことになりました。
本人の進め方に、落ち度はありません。渡した条件の側に問題があったのだから、こちらの責任で、余計な手間をかけさせたことになります。
僕は、すぐに動いた
対応は速かったんです。速かったから、抜けに気づけませんでした。
気づいてからの動きは、我ながら手際がよかったと思います。どこで条件が抜けたのかを確かめる。影響がどこまで及ぶかを整理する。必要なところへ「こちらの確認不足でした」と報告する。同じことが起きないように、手順と確認の方法を直す。
何もしなかったわけではありません。むしろ、仕事としてはかなり真面目に後始末をしていました。
その時の感覚も、正直に書いておきます。やることを一つ済ませるたびに、対応した、という手応えが増えていきました。原因は分かった。報告も済んだ。手順も直った。冒頭の目録に、チェックが並んでいく感覚です。
あの日の僕に「対応が不十分だ」と言っても、たぶん驚いたと思います。それくらい、ちゃんとやっているつもりでした。
一つだけ、抜けていたこと
そのリストに、やり直しをしてくれた本人と向き合う時間だけが、入っていませんでした。
会えなかったわけではありません。声をかける機会なら、いくらでもありました。ただ、あの日の僕は「まず仕事を片づける」を優先しました。
原因のところには何度も戻ったのに、人のところには戻っていませんでした。
そして、時間がたつと、今度は別の壁ができます。
何と声をかければいいんだろう。仕事の話としてはもう終わっている。手順も直した。今さら持ち出すと、かえって蒸し返すことにならないか。遅れたことそのものが言いにくさになって、さらに後ろへ延びていきました。
ナギ
前に、一対一で聞いた話を、本人に確かめないまま全員の前へ出してしまった失敗を書きました(会議のあと、その人は何も言わなかった)。あれは、言葉を出す前の話です。今回は、出すべき言葉を出さないまま済ませた話になります。
なぜ、気づかなかったのか
謝ることを軽く見ていたからでは、ありません。
当時の僕は、原因を直して、同じことを起こさないようにすることが、一番誠実な対応だと本気で思っていました。今でも、これは半分は正しいと思っています。原因を放置したまま頭だけ下げる方が、よほど不誠実です。
問題は、もう半分でした。対応そのものに意識が向きすぎて、時間を使わせた相手のことが、優先順位の外へ出ていたんです。
僕の場合は、真面目に対応しているつもりだったからこそ、抜けに気づきませんでした。原因を一つ直すたびに、「ちゃんと対応している」という手応えがありました。その手応えで、もう半分が見えなくなっていました。
後始末は、二つあった
後始末が二つあることを、当時の僕は知りませんでした。仕事の分だけを、全部だと思っていたんです。
一つは、仕事の後始末です。原因を直し、影響を止め、報告し、再発を防ぐ。ここまでは、あの日の僕もやっていました。
もう一つは、人への後始末です。自分の責任を認めて、相手に余計な時間を使わせたことを、言葉にする。長い説明が必要だったわけではありません。それでも、こちらだけが残りました。
仕事の処理が一つずつ終わるほど、「もう対応できた」という感覚が強くなります。その手応えだけを見ていると、残っているもう半分には気づきにくい。僕はそうなっていました。
僕は、起きたことは片づけました。起こした側の一言だけを、片づけていませんでした。
今なら、こう返す
原因や再発防止の説明より先に、自分の責任と、相手が失った時間を返す。この順番だけは、変えるようにしています。
返す中身は、三つだけです。何が起きたか。どこに自分の責任があったか。相手に何を余計に使わせたか。長い説明も、しっかりした場も、いりません。
今なら、こう伝えます。
「こちらの確認が足りなくて、やり直しをさせてしまいました。余計な時間を使わせてしまって、すみませんでした。」
あの時の僕が最終的にどうしたのかも、正直に書いておきます。あとになって、自分の側の不足だったと本人に話した記憶はあります。ただ、十分にことばにできていたかは、自信がありません。だからこれは、うまく挽回できた話ではありません。あの日の抜けを、書きながら決め直している話です。
遅くなるほど言いにくくなる。だから、できるだけ早いうちに一言だけ返す。
毎回できているとは、まだ言えません。それでも、順番だけは決めています。説明は、あとでいい。先に返す。
ただ、一つだけ書いておきたいことがあります。
一言を返しても、やり直しに使われた時間は取り返せません。だから、仕事の後始末はやはり必要です。
原因を直すこと。人に返すこと。
僕には、両方が必要でした。
まとめ|書き足す一行は、短くていい
変えたことは、小さいです。あの日のリストに、一行足すだけ。それも、いちばん短い一行です。
📒 あの日の目録に、足す一行
- 後始末は二つある。仕事を直す分と、人に返す分
- 返す中身は三つだけ。起きたこと・自分の責任・使わせたもの
- 遅くなるほど言いにくくなる。だから、できれば早いうちに
同じような場面は、これからも起きると思います。僕の確認は、これからも時々抜けるからです。その時に、仕事だけを片づけて終わりにしない。それだけを、決めています。
チェックは、すぐにそろいました。最後の一行だけを、僕は遅れて書き足しました。
※この記事は、一人の管理職の一次体験です。登場するやり取りは、特定の個人が分からないように再構成しています。
— Calmly. Surely. —
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