あなたの評価は、部下の口座に振り込まれていますか "承認の貸し倒れ"という落とし穴

(更新: ) 著者: ナギ
#管理職 #1on1 #評価面談 #部下育成 #承認 #フィードバック #40代管理職 #賞与
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あなたの評価は、部下の口座に振り込まれていますか|承認の貸し倒れという落とし穴

「自分は、ここにいて意味があるんでしょうか」

ある面談で、部下から、こう言われたことがあります。

部下
自分は、ここにいて意味があるんでしょうか。

部下

意外だったのは、その言葉が、感情的な訴えではなかったことです。むしろ、淡々としていました。もう答えは決まっている人の、確認のような口調でした。

僕の中では、その人をちゃんと評価していました。

「よくやっている」 「ここまで任せられるようになった」 「この領域は、かなり助かっている」

そう思っていました。でも、それを本人に、十分には伝えていませんでした。

つまり、心の中では評価していたのに、相手の口座には、一円も振り込んでいなかったのです。

この時期、賞与や評価面談で「何を、どう伝えるか」に頭を悩ませている管理職は多いと思います。実は、その納得を左右しているのは、金額そのものより「説明されたかどうか」のほうかもしれません。

📊 賞与の納得に効くもの

  • 納得している人の61.0%には、フィードバックがあった
  • 納得していない人で、フィードバックがあったのは27.3%
  • 企業の76.7%は重要と認識しているが、整備済みは48.7%(マイナビ・2026年夏ボーナス調査)

つまり、大事だと分かっているのに、半分の会社で、評価が相手にきちんと振り込まれていない。

📒 先に結論(この記事の3行)

  • 心の中の評価は、言葉にして振り込まなければ、相手には一円も届かない(=承認の貸し倒れ)。
  • 賞与・評価面談の納得は、当日の話術ではなく、目標設定の日にほぼ決まっている。
  • 承認は、気合いではなく仕組みにする。苦手なら、AIにも手伝ってもらえばいい。
ナギ
これは、褒め方のテクニックの話ではありません。現役の40代管理職である僕(ナギ)が、評価を"相手に届く形"で渡せていなかった、という反省の記録です。会計の言葉を借りて、一緒に整理していきます。

ナギ

あなたの評価は、相手の口座に振り込まれているか

結論から言います。人への評価には、二つあります。「心の中の評価」と、「相手の口座に振り込まれた評価」です。そして、相手に届くのは、後者だけです。

心の中で、どれだけ高く評価していても。期待していても。それを言葉にして渡さなければ、相手の通帳には、何も記帳されません。

承認の貸し倒れ|心の中の評価と、相手の口座に振り込まれた評価の図
図1:評価には「心の中の評価」と「振り込まれた評価」がある。届くのは振り込まれた分だけ。記帳されない評価は、未払いとして積もっていく。

僕は、これを「承認の貸し倒れ」と呼んでいます。

評価はしている。期待もしている。でも、伝えていない。その「未払い」が積もったまま、相手が辞めてしまうと、もう振り込めません。回収できないまま、信頼ごと、貸し倒れる。

心の中で評価していても、本人の口座には、一円も振り込まれていない。

少し硬い言い方をすれば「ありがとうの未払い」です。でも、ただの感謝の言い忘れではありません。「見ている」「評価している」「期待している」を、相手に渡せていない。これは、もっと根の深い問題です。

なぜ、評価は”心の中”で止まるのか

結論、評価が心の中で止まるのは、性格のせいではありません。管理職側の、いくつかの「都合」のせいです。だから、直せます。

正直に言うと、僕は、褒めるのが得意ではありません。意識しないと、言葉が出てこないタイプです。理由を並べると、こうなります。

ひとつ。「見ていれば、伝わるだろう」と思っていたこと。背中で語る、のような感覚です。

ふたつ。わざわざ言葉にすると、白々しく感じてしまう、という照れ。

みっつ。「ここは良いけど、まだ改善点もある」と考えてしまい、良い部分だけを切り出して渡すことに、抵抗があったこと。

どれも、もっともらしく聞こえます。でも、あとから振り返ると、これは全部、僕の側の都合でした。相手には、僕の脳内は見えません。評価していること自体は、相手の役に立っていないのです。

ここで大事なのは、これを「自分は褒め下手だ」という性格の問題にしないことです。性格は、すぐには変わりません。でも、「振り込み忘れ」なら、仕組みで減らせます。

褒め下手は、性格ではなく、振り込み忘れ。つまり、承認の貸し倒れは、直せる種類の事故です。ただ、その「後で言えばいい」が、間に合わないことがあります。

「自分は必要とされていない」と、評価していた部下が言った

結論、評価していることと、それが伝わっていることは、まったくの別物です。

冒頭の面談に戻ります。表現はいろいろですが、近いことを、何度か聞いたことがあります(個人が特定されないよう、複数の場面を少し混ぜて書いています)。

部下
ここにいて、意味があるのか分からない。
何を期待されているのか、分からない。
自分の仕事が、役に立っている実感がない。

部下

僕からすれば、「いや、めちゃくちゃ助かっている」「必要だから、任せている」のです。でも、本人からは、それが見えていない。

この「ギャップ」に気づいたとき、かなり反省しました。僕が高く評価していた、ということは、僕の口座の中だけで完結していて、相手の口座には、振り込まれていなかった。

逆の経験もあります。大げさに褒めたわけではありません。1on1や、何気ないタイミングで、具体的に伝えただけです。

「今回の進め方、かなり良かったよ」 「相手の立場まで考えて、動けていたね」 「ここは、安心して任せられるようになった」

すると、次から、その人の動きが少し変わりました。自信を持って前に出るようになったり、こちらに確認する前に、一歩踏み込んで考えてくれるようになったり。

承認は、相手を甘やかすものではありません。相手が、次に進むための燃料です。

部下は、褒められたいんじゃない。見られていたことを、知りたいだけだ。

評価していた。でも、振り込んでいなかった。その差額が、人を静かに辞めさせます。ちなみに、こうした「言える/言えない」の土台には、職場の安全な空気もあります。そこは別の記事(本音を話せる人が、いない|40代管理職の孤独)にも書きました。

承認は「気合い」ではなく「仕組み」にする

結論、振り込みを続けるコツは、根性ではありません。仕組みです。苦手なら、苦手なまま、仕組みで補えばいい。

僕がやっているのは、シンプルなことです。

まず、その場で短く返す。長く褒めようとすると、僕はかえって言えなくなります。だから「今の説明、分かりやすかった」「前回より、かなり良くなった」「ここまで整理してくれて、助かった」くらいの短さでいい。

次に、1on1では、必ず一つは良かった点を返す。課題だけで終わらせない。改善点を話す前に、「まず、ここは良かった」を入れる。

そして、できれば1営業日以内に振り込む。時間が経つと、こちらも忘れますし、相手も「何の話でしたっけ」になります。承認は、鮮度が命です。

🗝 承認を「仕組み」にする4点

  • その場で短く:長く褒めようとすると、言えなくなる。一言でいい。
  • 1on1で必ず1つ:改善点の前に、まず良かった点を1つ返す。
  • 1営業日以内に:承認は鮮度。気づいた翌日までに振り込む。
  • AIにgoodポイントを拾わせる:見落としがちな良い点を、AIに補ってもらう。

最後の「AI」について、補足します。良い点は、どうしても後回しになりがちです。課題は目につくのに、goodポイントは、意識しないと拾い損ねる。そこを、最近はAIに手伝ってもらっています。

面談メモや報告の内容を渡して、こう聞きます。

<AIに渡すプロンプト例>
「この面談メモから、相手に返すべきgoodポイントを3つ拾ってください。ただし、抽象的な褒め言葉ではなく、本人の具体的な行動に紐づけてください。」

すると、自分では見落としていた良い点を拾ってくれます。これはかなり助かっています。

念のため言うと、AIは「振り込み忘れ」を減らしてくれる窓口係です。振り込むのは、あくまで管理職本人です。AIが代わりに評価してくれるわけではありません。

承認を仕組みにする4点|その場で短く・1on1で1つ・1営業日以内・AIでgoodポイント拾い
図2:承認は気合いでは続かない。その場で短く/1on1で1つ/1営業日以内/AIでgood拾い、の4点を仕組みにする。

もうひとつ。同じ振り込みでも、相手の「口座」によって、届き方が変わります。結果を認められたい人、過程を見てほしい人、自分の役割の意味を確かめたい人。同じ言葉でも、響き方が違います。僕がエニアグラム(部下の取扱説明書)に行き着いたのも、結局そこでした。タイプ別の届け方は、別の記事群にまとめています(9タイプ取説の総集編年上の部下Z世代の部下)。

仕組みは、振り込みを忘れないための仕掛けです。気合いに頼るほど、貸し倒れは増えていきます。

納得は、面談当日ではなく”目標設定の日”に決まる

結論、賞与や評価の納得は、面談当日の話術ではなく、期初の「期待値合わせ」で、ほぼ決まっています。

承認の貸し倒れは、評価面談の日だけに起きるわけではありません。実は、目標設定の日から、始まっています。

これは、最近になって、ようやく腹落ちしたことです。「期初に握れていれば苦労しない」と思いますよね。僕も、長いあいだ、できていませんでした。だから、これは正解の手順、というより、遅れて気づいたことの共有です。

難しいのは、頑張りと評価が、一致しないこと。評価する側として、一番苦しいのは、ここです。頑張っているのは事実。でも、会社として評価される成果とは、少しズレていることがある。しかも、賞与には原資や評価枠という限りがあって、全員を思い通りには評価できません。

相対評価は、面談当日に説明しても、遅い。その人だけを見ればもっと評価したいのに、全体の枠の中では、この評価になる。これを面談当日にいくら説明しても、納得は、なかなか作れません。

だから、期初に握っておく。

🗝 目標設定の日に、合わせておく3点

  • 何を達成したら、評価されるのか
  • どこからが、期待値を超えたことになるのか
  • どこまでが、通常の期待値なのか

ここを期初に合わせておくと、評価のタイミングでは「期待値に対して、どうだったか」を一緒に確認できます。評価が、上司の主観ではなく、二人で引いた線との答え合わせになる。

そして面談では、金額だけを渡さない。「何が評価されたのか」「何が足りなかったのか」「次に、何を伸ばせばいいのか」を、セットで伝える。金額だけだと、人は勝手に、悪いほうに解釈します。「評価されていない」「頑張っても無駄」「上司は見ていない」と。

納得は目標設定の日に決まる|期初の期待値合わせから評価面談の納得までのタイムライン
図3:期待値ギャップは、評価面談の日ではなく、目標設定の日に潰しておく。期初に握れば、面談は答え合わせになる。

それでも、説明はできても、原資や評価枠という「会社の天井」は残ります。だからこそ、自分の現在地を社外の物差しで知っておくことも、防衛策の一つです。実際、賞与をきっかけに外を見る人は4割を超えるという調査もあります(マイナビ・2026年)。転職を決めるためではなく、現在地を知るために、です(詳しくは二つの値札市場価値、調べてみた。)。

▼ 主要2社・公式サイト(登録無料/社外の物差しで"現在地"を測る"高度計"として。転職を決めなくてもOK)

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期待値合わせは、評価面談の日に、貸し倒れを起こさないための、期初の「前払い予約」です。とはいえ、今期はもう走り出している、という人も多いはずです。それでも、大丈夫です。だから、せめて、気づいた今日から振り込んでいきましょう。

まとめ|気づいた日に、振り込む

整理します。評価しているなら、伝えたほうがいい。恥ずかしくても、少し白々しく感じても、伝えたほうがいい。

なぜなら、あなたの心の中にある評価は、相手には届いていないからです。部下は、あなたの脳内を読めません。「見ているつもり」「評価しているつもり」「期待しているつもり」。その「つもり」が積もると、相手の中では、未払いになります。そして、未払いのまま人が離れていくと、あとから取り戻せません。

📒 承認の貸し倒れを防ぐ4つ

  • 口座に振り込む:心の中の評価を、言葉にして相手に渡す。
  • 目標設定の日に作る:納得は、面談当日ではなく期初に決まる。
  • 気合いでなく仕組み:その場で短く・1on1で1つ・1営業日以内(AIも活用)。
  • 相手の口座で届け方を変える:同じ承認でも、タイプで響き方が違う。

難しく考えなくて大丈夫です。今日、誰か一人に、ひと言、振り込んでみる。それだけで、貸し倒れは確実に一件、減ります。

承認は、賞与面談の日だけに払うものではない。気づいた日に、振り込むものだ。


📖 参考書籍|「伝え方」を、仕組みにするために

フィードバック入門 表紙
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あわせて読みたい:承認を"続く仕組み"にするなら、本間浩輔『ヤフーの1on1』も、1on1を習慣に落とすうえで参考になります。


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