課長席の眺めは、悪くない。 「管理職になりたくない」あなたに、現役課長から見えた景色

(更新: ) 著者: ナギ
#40代管理職 #管理職になりたくない #管理職 断る #昇進 迷う #課長 #キャリア
この記事は約 12分 で読めます

※本記事にはプロモーション(アフィリエイトリンク)が含まれます。紹介する商品・サービスは、運営者が実際に利用または検討した上で価値があると判断したもののみを取り上げています。

課長席の眺めは、悪くない。管理職になりたくないあなたに、現役課長から見えた景色

「管理職になんて、なりたくない」。

現役の課長ですが、僕も、ずっとそう思っていました。この席は、安くありません。

いま、それは多数派の感覚です。JMAMの2023年の調査では、一般社員の77.3%が「管理職になりたくない」と答えています(出典:日本能率協会マネジメントセンター「管理職の実態に関するアンケート調査」)。

ただ、別の調査に、不思議な数字があります。昇進前は管理職になりたくなかった人の53.3%が、実際になってみると、気持ちがポジティブに変わったというのです(出典:リクルートマネジメントソリューションズの調査レポート)。

なりたくなかった人の、半分以上が、変わった。この差は、何なのでしょうか。

以前、管理職は「罰ゲーム」なのか、という記事を書きました。あれは、僕なりの「問い」でした。今日は、その問いに1年かけて見つけた、僕の答えを書きます。

罰ゲームだった日もある。でも、それだけではなかった。課長席には、座った人にしか見えない景色がある。

📒 先に結論(この記事の3行)

  • 席の値段(責任・激務)は座る前から見える。眺めは座るまで見えない
  • 眺めには、苦いものも含まれる。だから正直に書く(苦さ6:配当4)
  • 断るのも、正しい。これはこの記事の前提
ナギ
この記事は「管理職になれ」とは一言も言いません。断るのも正しい。ただ、見えないまま決めてしまうのは、少しもったいない。選ぶ前に、眺めの話をさせてください。

ナギ

管理職が罰ゲームだった日も、正直ある

きれいごとから始めても仕方がないので、一番苦かった話からします。

部下のメンタル不調が、重なった時期がありました。客先からは厳しい連絡が来る。上からは説明を求められる。部下のフォローは待ったなし。その全部が、同じ週に来る。

自分の仕事は、まったく進みません。誰も褒めてくれません。責任だけが、静かに増えていく。

あの頃の僕は、はっきり思っていました。「何で自分ばっかり」。世間が管理職を罰ゲームと呼ぶなら、その通りだと思った日が、僕にも確かにあります。あの時期の僕に近い状態の話は、管理職の燃え尽きの記事に書きました。

そして、ここで一つ告白をします。

実は僕は、課長の打診を何度も断っています。

理由は単純で、技術屋でいたかったからです。管理職になれば、技術から離れる。それが嫌でした。プレイヤーとして評価される方が、分かりやすかった。

では、なぜ最後は受けたのか。

当時の僕は、飲み会で会社の文句ばかり言っている自分が、少し嫌でした。文句は言う。でも、変える側には回らない。そんな自分を続けるくらいなら、一度くらい、変える側から見てみたかった。それだけです。立派な動機ではありません。

それでも、受けてみて気付いたことがあります。

あの頃の僕は、台風の日だけを見て、この街を判断していたのかもしれない。罰ゲームの日は、確かにある。でも、毎日ではない。そして、あの時期を越えたから見えるようになった景色が、あるのです。

たとえば、こんな小さな発見がありました。係長の頃の僕は、「なんで上は決めてくれないんだ」とずっと思っていました。課長になって見えたのは、決めない上司の怠慢ではなく、簡単に決められない理由の方でした。席が変わると、同じ問題が違って見える。これが、眺めの最初の一枚です。

管理職になりたくない理由になる席の値段は座る前から見える。課長席の眺めは座った人にしか見えない
席の値段は、座る前から見える。眺めは、座った人にしか見えない。

課長になって見えた景色①:部下の成長という、給料明細に載らない報酬

一枚目の景色は、人の成長です。

係長までの僕は、自分の成果が中心でした。自分の担当、自分の技術、自分の評価。それで完結していました。

課長になって数年経ったある日、会議で部下が説明をしていました。複雑な内容を、相手に合わせて噛み砕いて、僕より分かりやすく話していたのです。

正直に書きます。少し悔しかった。十年かけて磨いてきたつもりの技術を、目の前で軽々と越えられた気がしました。自分の価値が、少し減った気がしたのです。

でも、家に帰る頃には、悔しさより嬉しさの方が大きくなっていました。自分でも不思議な感情でした。

そしてあの日、初めて「自分がやらなくても組織は前に進む」と感じたのです。

チームの仕組みを変えて、「昔より働きやすくなった」と言われたこともあります。嬉しかった。ただ正直に言えば、そのために削ったものも、諦めたものもあります。タダで手に入る改善は、ありませんでした。

それから、気づいたら、技術ではなくキャリアの相談をされるようになっていました。これも正直、戸惑いました。僕に正解なんて持ち合わせがない。それでも誰かが人生の岐路で、僕の席のドアを叩く。その重さは、係長の頃には知らなかったものです。

管理職の報酬は、給料明細に載りません。人の成長を見届けられること。それがこの席の、一番の配当だったと思います。

課長になって見えた景色②:管理職の仕事は「捨てる勇気」だった

二枚目の景色は、自分の手の中にありました。

課長1年目の僕は、全部を自分で何とかしようとしていました。手を出して、抱え込んで、夜に自分の仕事をやる。典型的な失敗です。

そこから学んだ一番大きなことは、派手なスキルではありませんでした。優先順位を決めること。それだけです。

具体的に、何を捨てたか。

📌 僕が捨てたもの

  • 毎週の定例会議を一つ。なくても回った
  • 全部に目を通す確認。節目だけ見ることにした
  • 自分が手を動かす仕事。得意な仕事ほど、意識して部下に渡した

正直、どれも手放す瞬間は怖かったです。会議をやめれば情報が入らなくなる気がした。確認を減らせば質が落ちる気がした。でも、落ちませんでした。落ちたのは、僕の「自分がやっている」という安心感だけでした。

だから、断言できます。

「やる勇気」より、「捨てる勇気」の方が難しい。

決める話も、手放す話も、これまで別々に書いてきましたが、結局は全部ここに行き着きます。課長席で毎日やっているのは、何かを選んで、何かを捨てる仕事です。

管理職1年目は全部自分の手で抱え込む。今は選んで残して部下に渡す。やる勇気より捨てる勇気
捨てたのは仕事。落ちたのは「自分がやっている」という安心感だけ。

課長になって見えた景色③:「外」と、変えられない無力さ

三枚目の景色が、この記事で一番書きたかったものです。一番価値があって、一番苦い。

若い頃の僕は、自分たちで考え、自分たちで解決することが「正しい」と思っていました。自力で粘るのが誠実さだと、どこかで信じていました。

課長になると、他社や異業種の人と接する機会が増えます。外部の研修、業界の集まり、他部門との調整。最初はただの業務でした。でも、続けるうちに気付いたのです。

自分たちが悩んでいる問題の多くは、誰かがすでに悩み、解決している。

うちのチームが何ヶ月も格闘していた問題と同じ構図を、別の業界の人があっさり話していたことがあります。向こうでは、とっくに解決済みの「よくある話」でした。

医者の診断に迷ったら、別の医者にも聞く。セカンドオピニオンという言葉は知っていました。でも課長になって初めて、その価値が本当に分かりました。自分たちの「正解」を、外の目で確かめる。それだけで、何年も悩んだ問題が一日で片付くことがあるのです。

ここまでなら、いい話です。「視野が広がりました」で終われます。

でも、本当の眺めには、続きがあります。

外を知れば知るほど、社内の改善点が見えてくる。そして同時に、一会社員では変えられない無力さも知る。

係長の頃に見えていたのは、「改善案」まででした。あれを直せばいい、これを変えればいい。見えること自体が、ちょっとした優越感でもありました。

課長になると、その先まで見えてしまいます。なぜそれが変わらないのか。どこで止まるのか。会社の方針、組織のしがらみ、自分の権限の外側。

改善点は見える。でも、簡単には変えられない。

両方が同時に見えるのが、この席です。

これは、座る前には想像もしていなかった苦さでした。知らない方が楽だった、と思った日もあります。

それでも僕は、見えない頃には戻りたくないと思っています。

変えられないことを嘆き続けるか、変えられる持ち場に力を注ぎながら、外の視点と往復するか。僕は後者を選びました。会社だけが人生になると苦しくなるという話や、自分の保全計画で書いてきたのは、結局この往復のことだったのだと思います。

課長になって外が見えるようになった。改善点は増えた。でも一会社員では簡単に変えられない無力さも知る
見える改善点は、増えた。でも、簡単には変えられない。両方見えるのが課長席。

それでも管理職を断るあなたは、正しい

ここまで読んで、「やっぱり自分には要らない」と思った人へ。

その判断は、正しいと思います。

僕の周りにも、断った人がいます。途中で降りた人もいます。家庭を優先した人も、専門職を貫いた人もいます。全員、正しいと思う。本当に。

ただ、一つだけ伝えたいことがあります。

理解して選ぶことと、知らずに避けることは違う。

僕の周りで管理職を断った人たちは、避けたのではありません。選んでいました。この席に何があるかを知った上で、自分の優先順位と比べて、要らないと判断した。だから、迷いがない。

一方で、眺めを知らないまま「なんとなく怖いから」で目をつぶると、断った後もずっと、心のどこかに「あれで良かったのか」が残ります。選んだ人は振り返らない。避けた人は、振り返り続ける。

念のため、値段の側も。人事と予算は面倒ですし、上から塞がれている感覚もあります。それでも、自由にやれる領域は確実に増える。試しながら楽しむぐらいの気持ちでいい。そう思えるまで、僕も時間がかかりましたが。

打診を何度も断っていた頃の自分に、いま声をかけるなら、こう言います。「思ったより悪くないぞ」。ただ、これはあくまで僕の景色です。

最後に、明日できることを一つだけ。

断る前に、あなたの上司に聞いてみてください。「この席から、何が見えますか」。答えに詰まる上司なら、その席の眺めは推して知るべし。語り出す上司なら、その話は聞いておいて損はありません。

選ぶ前に、外の物差しを一つ

断るにせよ、受けるにせよ、一度だけ外の物差しで自分を測っておくと、その選択は「逃げ」ではなく「選択」になります。辞めるための登録ではなく、断る判断にも受ける判断にも効く物差しとして、僕は転職サイトを定点観測に使っています(いきなり登録は重いという人は、1分の自己更新セルフチェックからでも十分です)。

🤝 JACリクルートメント|30〜40代ミドル・ハイクラス特化

面談で"あなたの経験"を言語化してくれるエージェント型の老舗

  • 年収600万円〜2,000万円のミドル・ハイクラス案件が中心
  • 40代管理職・専門職の支援実績が豊富
  • 受けるか迷っている段階でも、経験の棚卸しの場として使える
JACリクルートメント公式サイトへ →
📚 リクルートエージェント|求人数トップクラスの総合型

業界最大手の求人量で、市場の「現物」を自分の目で確かめられる総合型エージェント

  • 非公開求人を含めた業界最大級の求人数
  • 管理職経験がどんな求人で求められているかを現物で確認できる
  • 登録無料・エージェントが企業との交渉を代行
リクルートエージェント公式サイトへ →

※賞与支給後の7〜8月は、求人・登録が動きやすい時期です。

まとめ|課長席の眺めは、悪くない

📌 持ち帰り

  • 罰ゲームの日は、ある。でも台風の日だけで街を判断しない
  • 給料明細に載らない報酬がある(人の成長という配当)
  • 「捨てる勇気」と「変えられない無力さ」まで見えるのが課長席
  • 断るのも正しい。理解して選ぶことと、知らずに避けることは違う

そして今、「罰ゲームだ」と自嘲しながらこの席に座り続けているあなたへ。

あなたが毎日見ているその景色には、もう名前があります。あなたは罰を受けているのではない。誰にも見えない景色を、引き受けて見ている。

課長席から見える景色は、決して綺麗なものばかりではありません。改善したいことが見えるのに変えられない日もある。理不尽な板挟みになる日もある。それでも僕は、この席の眺めは悪くないと思っています。人の成長も、組織の変化も、この席からしか見えない景色だからです。

眺めは、座った人にしか見えない。だから僕は、僕の席から見えたものを書きました。

あなたの席の眺めは、あなたにしか書けない。

— Calmly. Surely. —


🗂️ あわせて読みたい

📖 参考書籍|打診に迷っているあなたへ、1冊だけ

増補版 駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を科学する 表紙
▶︎ 「なってからの不安」を実証研究で科学する

増補版 駆け出しマネジャーの成長論 ―7つの挑戦課題を「科学」する

中原 淳 著(中公新書ラクレ)

突然管理職に抜擢された人がつまずく「7つの挑戦課題」を、膨大な調査データで解き明かした一冊。僕がこの記事で書いた眺めの正体を、研究者の目で裏付けてくれます。打診に迷っている段階で読むと、不安の解像度が上がります。

  • 新任管理職がつまずくポイントが事前に分かる
  • 「プレイヤーとの両立」など40代の不安ど真ん中を扱う
  • 精神論でなく調査データベースで安心して読める
Amazonで見る →

※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。リンク経由で商品・サービスをご利用いただくと、運営者に紹介料が支払われることがあります。価格や評価が変わるものではありません。

※本記事のエピソードは、個人と職場の特定を避けるため、一部を再構成しています。

🧭 次に読むおすすめ

この記事とテーマの近い順に選んでいます

管理職は、偉くなる仕事じゃなかった|引き受けの総量が一段増えるということ
管理職論

管理職は、偉くなる仕事じゃなかった。|"引き受けの総量"が一段増えるということ

辞令は、相談じゃない|配属の重力に平時から備える40代管理職
管理職論

辞令は、相談じゃない。|"配属の重力"に、平時から備える40代管理職の話

本音を話せる人が、いない|最後は自分で決めるしかない40代管理職の孤独
管理職論

本音を話せる人が、いない|"最後は自分で決めるしかない"40代管理職の孤独