「これ、何のためにやってるんですか」と聞かれました。 − "名残の決まり" −
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いま続けている仕事について、部下から質問を受けました。「これ、何のためにやってるんですか」。
僕は、答えられませんでした。
長く続いているものの中には、それを決めた本人が、もう職場にいないものがあります。僕自身も、いまある仕事の全部の出どころを知っているわけではありません。
「昔からこうだから」と言えば、その場は終わります。でも、それは僕が一番嫌いな答え方でした。
だから、過去をたどりました。たどるのは、思っていたよりずっと大変でした。
「これ、何のためにやってるんですか」に、答えられませんでした
理由を知らないまま、続けさせていました。
一度きりの話ではありません。似たような聞かれ方を、何度か受けています。
「このやり方で本当に正しいんですか」に近い問いが来ることもあります。
若手の部下
そして、僕自身も思うのです。確かに、これはなぜやっているんだろう、と。
困ったのは、その先です。僕の側に、返す材料がありませんでした。
知っていて黙っていたわけではありません。その仕事が始まった背景や、なぜいまの形になったのかまでは、十分に引き継がれていませんでした。
僕は、途中からこの職場に来た側です
僕は途中からこの職場に来た側です。分からないまま、その場で答えられないことがありました。
ナギ
長く続いているものの中には、それを決めた人が、もう職場にいないものがあります。
形は残っていました。でも、なぜその形になったのかは、すぐには分かりませんでした。
「昔からこうだから」と、言いかけました
理由の代わりに、続いてきた長さを持ち出そうとしていました。
「昔からこうなので、その通りやってください」。そう言えば、その場を終わらせることはできます。
ただ、僕はこの答え方が一番嫌いです。僕自身がそう言われても、まったく腹落ちしないからです。
僕が納得できない答えを、部下に渡したくはありません。
もう一つあります。「この人に聞いても分からないんだな」と思われてしまえば、次から疑問を持ってきてもらえなくなるかもしれません。
僕は、そういう返し方が、少しずつ上司への信頼を削っていくと考えています。だから、分からないときに勢いで答えることは避けています。
それでも、口から出かかることはあります。
ナギ
出どころをたどるのは、かなり大変でした
🧾 この章の話
決めた人がもういないものを、どうたどったかの話です。
出どころをたどると、それを決めた人は、もう職場にいませんでした。事情がまったく残っていないわけではありません。
ただ、たどり着くまでが、思っていたよりずっと大変でした。
長く続いているものには、当時、その形にした事情があったはずです。そう思って見ます。
形だけが、名残のように残っていました
決めた人を責めたいわけではありません。事情は見えにくくなって、形だけが、名残のように残っていました。
残っている情報を探し、関係する情報をたどっていくと、なぜその形になったのかが分かったことがあります。絡んだ糸を、一本ずつほどいていくような作業でした。
いまある仕事の全部をたどれているわけではありません。それでも、たどれたものについては、形の後ろにあった事情が見えました。
その場で言えても、残っているとは限りません
理由をその場で言えても、あとから読める形で残っているとは限りませんでした。
担当者が不在になっても仕事が止まらないように、渡し方を考えた話は前に書きました。あれは、渡す相手も、渡す本人も、まだ職場にいる話でした。
今回は、渡すはずだった人が、もういない話です。
答えられなかったものを、すぐには消しませんでした
答えられないものを、すべてやめてよいわけではありませんでした。
まず、線を引いておきます。安全、法令、品質など、勝手に外してはいけないものは、この話の外です。
理由を知らないからといって、変更してよいわけではありません。根拠を確認できないうちは、外しません。
ポイント:この話の外にあるもの
- 安全、法令、品質など、勝手に外してはいけないもの
- 根拠を確認できないうちは、外さない
ここから書くのは、日常の進め方など、管理職の裁量で見直せる範囲の話です。
前に決めた人が残したものには、まず何か理由があったはずだと考えます。簡単には消しません。
判断材料を、そろえます
筋が通っているか。いまの状況と合っているか。
もとの考え方は何だったか。角度を変えて情報を集めて、判断材料をそろえます。
そのうえで分けます。いまも必要だから残すものもあれば、いまの状況なら変えた方がよいもの、もう必要がないのでやめるものもあります。
理由が分からないことは、不要の証拠ではありません。僕がまだ理由までたどれていないだけかもしれません。
いまは、報告書に「なぜ」を書き足しています
自分が着任してから変えたものは、報告書に、調べて分かったことまで書いて残しています。
何を調べて、何が分かったのか。なぜ変えることにしたのか。
どういう流れでその形になっていたのか。それを、変えた結果と同じところに書いておきます。
ポイント:変えたときに、一緒に書いておくこと
- 何を調べて、何が分かったのか
- なぜ変えることにしたのか
特別な様式は要りません。いつもの報告の中でいいと思っています。
反映先の文書にも、あとから「なぜこの形なのか」が要りそうなものは、理由まで書いてもらうようにお願いしています。量が多くて本文の邪魔になるときは、後ろにまとめて付けることもあります。
変更した形だけではなく、なぜ変えたのかまで残します。
次に何かを変えるとき、その報告に、なぜまで書いておく。この記事から持ち帰ってもらうなら、その一つです。
ナギ
まとめ|決めた形だけでは、渡したくない
当時は、その形にした事情があったのだと思います。渡らなかったのは、その事情のほうでした。
決めた人がいないなら、いま決めるのは僕です。決めた結果を引き受ける話は前に書きました。
今回は、その決めたものを、次へ渡す話です。僕が決めたものも、いつかは誰かに渡ります。
📌 僕が、次の人に残すもの
- 理由が分からないことは、不要の証拠ではありません
- 変更した形だけではなく、なぜ変えたのかまで残します
「昔からこうだから」で渡されて、僕は困りました。だから、同じ形では渡したくありません。
僕が残したいのは、決めた形だけではありません。「なぜそうしたか」までです。
※この記事は、一人の管理職の一次体験です。決まりの中身・時期・聞いてきた相手は、個人や会社が分からない形に整えています。安全・法令・品質に関わる決まりは、理由が見えなくても勝手に外しません。この記事で扱ったのは、日常の進め方など、管理職が見直せる範囲の話です。お勤め先に規程があるなら、そちらが先です。
— Calmly. Surely. —
昔からこうだから、を考え直す本がありました
出どころをたどっていた時間は、いったんできあがったものを、もう一度考える時間でもありました。『THINK AGAIN』の第1部の見出しは「自分の考えを再考する方法」です。向きが、同じでした。
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THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す
組織心理学者の著者が、一度できあがった考えを、もう一度見直すことを扱った本です。決めたあとに考え直すときの、手がかりになります。
- 一度決めたことを、考え直す側の視点をくれる
- 第1部に、「思考の盲点」に気づく章がある
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